Column & Blog 13


 転用、引用はご自由にどうぞ(事前にご連絡ください)。

[No,1~No,39] [No,40~No,79] [No,80~No,119]
[No,120~No,159] [No,160~No,199] [No,200~No,239]
[No,240~No,279] [No,280~No,319] [No,320~No,359]
[No,360~No,399] [No,400~No,439] [No,440~No,479]
[No,480~No,***]

 No,480  【常識をそれとして見逃さず、一旦立ち止まって考えること】
 No,481  【日本に住んでいると実感の無い超重税国家の事実】
 No,482  【MRJの失敗は国策企業であることと、三菱重工の凋落】
 No,483  【1次元や2次元でモノを見る力と3次元+1で考えられる力】
 No,484  【思い起こせば高校時代の友人同士で始めた株式投資と現在】
 No,485  【内閣府試算のマクロ経済プランの楽観性について考える】
 No,486  【エンゲル係数から見る2人以上世帯の生活実感はどのようなものか】
 No,487  【安いと感じる株価とスーパーのチラシに騙されないために】
 No,488  【建設用重機レンタル業界の好調ぶりとこれから先の状況について】
 No,489  【バブルの定義とこの言葉をあまり使わない理由について】
 No,490  【ヤオハンの世界戦略と大いなる失敗から我々が学ぶこと】
 No,491  【投資の目安となる各種利益について理解しましょう】
 No,492  【株式の持合いとその問題点について】
 No,493  【日本企業の製品やサービスに疑問を持たざるを得ない理由】
 No,494  【債権投資と株式投資の違いと、メリット・デメリット】
 No,495  【憲法改正問題と国民主権の観点からの護憲的改憲について】
 No,496  【長期金利の上昇リスクから、個人は債券投資も視野に入れるべき】
 No,497  【利息制限法と出資法の狭間で揺れた消費者金融業者と借方】
 No,498  【昨今の水害報道と水災は行政の失策に伴う人災であることについて】
 No,499  【外国人のモノを見る目の確かさから日本人は多くを学ぶべき】
 No,500  【MonotaROの成長の裏にある品揃えの豊富さと今後の課題】
 No,501  【ガソリン価格の高止まり要因は円安?原油価格の上昇?】
 No,502  【投資家目線で見た最高にコスパが良い自動車は何であるのか?】
 No,503  【スケールメリットを生かせない日本は隙間産業で生きる?】
 No,504  【毎年出てくるウイルスに対する過剰反応と思考力低下】
 No,505  【今年急に騒ぎ出した感染症が知らしめる社会の要・不要】
 No,506  【学校教育で必要なカリキュラムについて考える】
 No,507  【徹底的なデジタル嫌いも一歩引いて観てみると...】
 No,508  【手段が目的化してしまうことについて考える】
 No,509  【小室直樹著:日本人のための宗教原論を読み返して】
 No,510  【転売という副業をするならまず目利きになるべき】
 No,511  【昨今のニュースで気になっていること:食料問題】
 No,512  【「お金がない」と口にする人が多くなったことについて】
 No,513  【システムは人を無能にさせ社会の分断を生むことについて】
 No,514  【「格差」社会という言葉に踊らされる人々と現実の状況】
 No,515  【ゲンティン香港の会社更生法すら取り上げない桃源郷】
 No,516  【時事の話:共通テストの試験問題流出ニュースについて】
 No,517  【個人情報について改めて考える時期が来ていることについて】

  





 【常識をそれとして見逃さず、一旦立ち止まって考えること】 第480回

 多く人は常識を持って生きています。ここで言う常識とは法律知識や地理、歴史などの「一般常識」ではなく、「常識という枠」を指しています。枠は企業という組織に習って出来ているケースもあるでしょうし、地域コミュニティに習っている場合もあるでしょう。肝心なことはそれぞれが正しく、そして間違えている点です。
 常識という決まりごとは事実に基づいて生まれなければなりません。しかし、大抵の場合はそれを利用する人間の都合によって書き換えられてしまいます。具体的には、

○ 地震は一定周期で決まった場所に起こる
○ 火山活動は一定周期で決まった場所に起こる
○ 血圧は高いと良くない
○ 生命保険には入らなければならない
○ 回転寿司のサーモンは鮭である
○ 体脂肪率は低いほうが良い

 私は専門家ではありませんのでブログの内容に責任を持てるレベルにないのですが、少なくとも日本には何百という断層があり、日本国内のどこで地震が起こってもおかしく状況です。北海道でも沖縄でも、明日でも明後日でも来年でも、10年後でも、今でも。今日も大阪北部を震源とした地震があり、何名の方かが亡くなられました。とても残念なことですが、地震の規模はM6.1ですから普通の地震です。起こった場所に多くの人が住んでいたことが報道を大きくさせているに過ぎません。なお、マグニチュードの表現は理解しにくいと思いますので、0.2増えると2倍になると考えればよいと思います。M6.3なら今日の地震の2倍のエネルギー、M6.5なら4倍、M6.7なら8倍、M6.9なら16倍といった具合です。そうして計算すると、東日本大震災のM9.0というのが如何に大きなエネルギーをもった地震であったかが解ると思います。なお、地震の予知に関しては、東大の地震研が大きな力を持っており、自分たちの都合の良い地域に地震が発生する確率を高め対策予算や研究費を投入します。これが御用学者たる所以で、人間の都合というものです。実に常識とは厄介です。
 火山活動も同様で、桜島のようにおおよそ一定の間隔で噴火をするイメージで考えられている人が多いようですが、御嶽山の例にあるように、富士山などの山もいつ噴火するか解りません。噴煙柱崩壊型の噴火が起これば富士山はあっという間に崩れ去りますが、こうした話はあまり耳にしません。とりあえず有名な活火山には色々なセンサーが配置されており、噴火の直前にはその兆候も掴めるようですが、その情報を得てから安全なところまで逃げることは不可能なようです。こちらの常識も学者によって創られたものといって良いでしょう。噴火する・しないはほとんど確立で表現できないからです。
 血圧に関しても140を超えると高いと判断され降圧剤を無条件に飲まされる傾向にあります。血圧が下がれば体中への血液の循環が滞るため、手足の冷えや脳の疾患(脳梗塞など)を誘発すると最近の研究では報告されております。この問題は個人差があり、適正血圧はそれぞれであること、必要以上に高ければ脳出血の危険が出ることなどを知っておくのが大切で、一律140以下に下げる必要があるというのは危険な常識であることです。年齢+90が一定の目安のようです。
 生命保険に関しては以前のブログに書いた通りで、生命保険に加入できるような経済状況なら医療特約はいらないと思います。回転寿司のサーモンは大抵がトラウトサーモンで、マスと鮭の掛け合わせた魚で、その餌には成長ホルモンや抗生物質もたくさん使われていると考えるのが自然です。さらに、体脂肪率に関しては20%程度の人が一番長生きのようです。何でも下げればよいと考えがちですが、最近の研究では体脂肪率が低くコレステロールも低い人間が一番短命のようです(私はここにあてはまります)。

 今回は簡単な例をとって常識とされているものが如何に怪しいか、無責任なものであるかを書いてみましたが、投資においても同様のことが言えると思います。ファンダメンタルズは大切な指標です。「自己資本比率が高く配当性向が高ければよい会社で、PERが10倍以下でPBRが1倍以下なら割安」というのは安易な発想であり、安易なスクリーニング条件です。相場は大きな資本によって作られますから日経平均採用銘柄ですら想った通りには動いてくれません。まるで生き物のようだなどと言う人もいますが、売り手と買い手が存在して初めて値段がつくことがその理由でしょう。喉が渇いて脱水症状を起こしている人からすればペットボトル1本のボルビックが10万円でも安いモノかもしれません。10万円でも欲しいという脱水症状の人がいて、水の備蓄が十分に備わっていて売る気がある人がいれば売買が成立します。ですから、何を持って割安とするかを常識に縛られて決定するのは危険であり、まずは相場全体の流れに留意する必要があると思います。ファンダメンタルズで銘柄を選ぶようならば少なくとも過去5年程度の情報を保有しておくべきでしょうし、テクニカルで買い入れの判断をするようならVI指数に十分留意し、TOPIXや日経平均に連動しているかをしっかりしておくことが大切になってきます。
 世の中に出回っている常識の大半はそこにいる人間に都合よく作られたものです。まずは常識を疑ってみませんか。そしてひとつずつ考えてみませんか?

<サイト管理人> 2018年 6月18日記述



 【日本に住んでいると実感の無い超重税国家の事実】第481回

   世界で最も「税金が高い国」トップ10が公表されています。多くの人は北欧などと比べて日本の税金が安いと思ってはいませんか?それはプロパガンダに過ぎません。日本が実質の第1位となっています。1位のアルバは地域に過ぎないからです。日本は世界一の重税国家でありながら、社会保障があまりにも貧弱です。何でも買っても税金(消費税、登録免許税、酒税、タバコ税、自動車取得税、揮発油税などなど無数)、所有して税金(固定資産税、都市計画税、自動車税、重量税、などなど数多く)、売って税金(所得税、印紙税)、働いて税金(所得税、住民税など)、会社を経営して税金(法人税、事業税)、家賃をもらって税金(所得税)、相続して税金(相続税)、贈与しても税金(贈与税)。年金や健康保険料の支払いも事実上税金です。日本の税率の高さは世界でも突出しております。ちなみに、ランキング5位までを書き出しますと、

■1位:アルバ
 南米ベネズエラの沖にある島で、オランダ王国の構成国。
 法人税28%、最小所得税7%、売上げ税は総売上高の1.5%、最大所得税約59%という税率。

■2位:日本
 名目GDP世界第3位、輸出国第5位、国家ブランド指数1位。
 法人税は約30%、最小所得税15%、最大所得税50%、給与税は25.63%で消費税は8%。直接税と間接税の形で多岐に徴収しており、挙げればきりがない。

■3位:イギリス
 人口は6400万人、世界でトップ5の経済大国。

■4位:フィンランド
 人口はおよそ550万人かつ人口密度が低い国。

■5位:アイルランド
 北西ヨーロッパの主権国家。1人当たりのGDPが年間で48,787ドルという豊かな国のひとつ。

 「現在8%である日本の消費税率は15%以上が通常である欧州諸国よりかなり低い状況であり、まだ税率の上げ余地は十分に存在する」というのが政府の主張です。その考えを基にしていろいろな増税を考えています。しかし、欧州では生活用品は非課税ないし軽減税率が適用さます。イギリスは標準税率が18%程度ですが、食料品や子供服など日用生活品は非課税で、軽減税率も多く存在します。ドイツなどは標準税率が19%で食料品は7%です。しかし、日本と欧州では社会保障制度が全く異なるのです。さらに欧州では、住宅補助が充実し、医療費や高校・大学の学費もゼロの国が多くあります。移民政策も含めて包括的に考えていることから老後も「年金で充分暮らしていける」状況にあるでしょう。
 額面の負担率だけで増税を考えるのは不自然です。まず先に財政健全化と公平な社会保障を求めるべきです。そもそも外郭団体も含めた実質の公務員が多すぎるのです。労働生産性という概念から外れている存在に回す一般・特別の予算が大きすぎます。あらゆる税制や行政組織が複雑にありすぎ、無駄と言える経費が実際にどの程度発生しているのか把握することすらできません。行政の縦割り問題を言われて久しいのですが、これは高さ方向にも重なっているのです。治安の悪い欧州がすべて良いとは言いませんが、税という点に限定すれば税金の種類を大きく絞り、すべて直接税とし、歳入庁の一括徴収とすべきです。現在は窓口が多すぎるのです。そして、実質の行政機関が多すぎるのでこちらの数も絞り、すべての支出(帳簿)をネット上でオープンにしなければなりません。つまり民間では当たり前の明朗な会計です。元々重税国家ですから、今更消費税を10%にするなどというのは大した問題ではありません。肝心なのは徴収した税金の使い方と使い道です。

 私たちは実質公務員を養う為に稼いでいるのではありません。消費しているのではありません。豊かな生活を送る為の手伝いをさせる為にそれらを使っているのです。政治家を動かしているのです。どうにも順番が逆になっているようです。外郭団体も含めた行政天国のこの国はひたすら浪費を続け、同時に資産を海外に流出させ続けております。この問題は日本円の価値下落、株価下落にも繋がってくるでしょう。重税が悪いのではありません。実質行政の大幅な効率化と、それに見合った社会保障の申請先(雰囲気も含む)の拡充を図ることが筋ではないでしょうか。

<サイト管理人> 2018年 6月23日記述



 【MRJの失敗は国策企業であることと、三菱重工の凋落】第482回

   三菱重工業は、国産初のジェット旅客機「MRJ」(三菱リージョナルジェット)を開発する子会社の三菱航空機の資本増強を行うと発表しました。三菱航空機は開発費がかさみ約1000億円の債務超過に陥っています。三菱航空機の他の株主と具体策を協議した上で、2018年度中に債務超過の解消と財務基盤の強化を図る計画です。
 MRJの開発が始まった2008年当初は2013年の納入開始を予定していたのですが、すでに5回も延期されており、現在は2020年半ばを目標にしている状況です。1回目のテストフライトでは社長が「おおむね成功」という発言をしましたが、日本語を正確に理解すれば「問題点がいくつも見つかっているが飛んだ」ということになります。よって、初飛行は事実上失敗だったのです。これら一連の問題は、半世紀ぶりの国産旅客機開発からの経験不足などを理由にしておりますが、そもそも技術力が無いのです。現在は外国人技術者の大量投入などで開発を急いでいるようですが、遅延で開発費が膨張し、当初想定した1500億円程度から、今は6000億円超に膨らんでいるようです。

 第2次世界大戦後初めて日本メーカーが開発した旅客機YS11の生産が1973年に中止されて以降、日本の企業が独自開発した民間用旅客機がありませんでした。その後、経産省はじめ、政府は、日本独自開発による「日の丸旅客機」の実現のために長年にわたり、巨額の補助金・融資などで民間企業を支援してきました。要するに私たちの税金です。そうした中で立ち上がったのが、三菱重工のMRJジェット旅客機プロジェクトだったのです。MRJと言えば三菱重工のプロジェクトだと皆が思うのですが、実際には、補助金まみれの経産省主導の「日の丸ジェット」プロジェクトなのです。

 現在、納入が7年後ろ倒しになっているにも関わらず、MRJは427機の受注数を維持してきました。米メーカー製の最新鋭エンジンの搭載が評価されてきたためでしょうが、今年の1月下旬に米イースタン航空の発注した40機がキャンセルされました。キャンセルはこれが初めてになりますが、これからも多く出てくると思います。競合となるブラジルの小型旅客機大手・エンブラエルも目下同じエンジンを積んだ新型機を開発しており、これまでの遅延で、時間的な優位性はほぼ消えました。残る受注を維持できるとは思えないのです。価格面で負け、性能面でも同等ならばユーザーはエンブラエルやボンバルディア機を選択するのが普通です。

 さらに、その親会社である三菱重工業も、苦しい状況に追い込まれています。原因は「MRJ」だけでなく、「造船部門」の切り離しや「火力発電部門」における日立製作所との訴訟合戦です。両社はそれぞれの火力発電事業部門を統合し、2014年に三菱日立パワーシステムズを設立しました。両社にとって、火力発電事業は屋台骨とも言える重要な事業ですが、世界の競争はますます厳しさを増しています。そこで、統合によって、世界の2強、GEとシーメンスに対抗できる勢力を目指したのです。ところが、統合前に日立が受注していた南アフリカの火力発電プラント建設で工事の遅延が発生しました。アメリカで東芝の子会社が、原発建設の遅れから大規模な損失を出して、破たんに追い込まれたのは最近のことですが、これと似たことが起きているのです。そして、これによって発生する巨額の損失の負担をめぐり、日立と三菱の間で折り合いがつかず、三菱は損失額7634億円全額の支払いを日立に求めて、2017年7月末に日本商事仲裁協会に仲裁を申し立てています。現在までに結論は出ていないと思います。

 先進国における従来型の重工業そのものが行き詰まっている中で、過去の三菱自動車の問題や三菱ふそうの問題にあるように、三菱財閥が抱える企業体質や、補助金を使った製品開発が如何に難しいかを考えさせられます。補助金は私たちの税金であり、本来は社会保障を厚くすることを優先すべきなのですから、飛ばない売れない飛行機にいつまでもこだわる必要は無いと思います。政府の資本や補助金が入っていなければ三菱リージョナルジェット社は既に破綻しているのです。そして、親会社の三菱重工業も無傷ではいられないでしょう。三菱財閥の御三家とはいっても厳しい未来が待っているものと思われます。かつて同財閥の三菱地所がロックフェラーセンタービルを購入した時代とは全く状況が異なっています。

<サイト管理人> 2018年 6月24日記述
 参考記事「AERA dot 2017年12月27日」



 【1次元や2次元でモノを見る力と3次元+1で考えられる力】第483回

   私は空間認知能力、空間識別能力が欠損しており、折り紙などは全く出来ません。鶴を折ることも、コップやカエルを折ることもできません(手先は器用な方で、小さな部品のハンダ付け作業も他の人と比べて見劣りするようなことはないのですが...)。折り紙が出来ない自分に気づいたのは小学生の頃でしたが、当時はあまり気にしていませんでした。能力の著しい欠損に気づいたのは中学で学ぶ空間図形の断面を想像する問題を解いた時ですが、周りの人間が簡単に答えを出す中で、自分だけ全く解らないのです。今でも星型の柱を斜めに切断した時の断面図を想像するには時間を要します。折り紙を半分に折って、さらに半分に折ってハサミで一部を切断してその紙を開いた時の展開図はほぼ回答できません。ルービックキューブも全くだめです。高校入試時には出題の可能性のある問題と回答を丸暗記することで対応しましたが、これは何の解決にもなりませんでした。そういう意味において2次元図面から立体的構造物を想像できる人を尊敬してやみません。もし自分にこの能力があったら生き方や考え方も大きく変わっていただろうと思います。

 株価のチャートは2次元で基本X軸に時間、Y軸に株価を表示しますから、見ていて違和感はありません。ローソク足もスティックも見やすいですし、X軸の伸縮もY軸の対数表示化にも対応できます。もしここにもうひとつのパラメータを加えたXYZ軸の3Dチャートがあったら理解できるのだろうかと思い、X軸に時間、Y軸に株価、Z軸にBPSやPBR、PERなどをとってExcelにて作画してみたところ抵抗はありませんでした。星型柱の断面図というのは3次元+1(切断)の想像力を要するので、先ほどのExcelシートのような単なる3次元データの解釈とは違うようです。なお、私は地図を見ることも好きなのですが、等高線通りに作りこまれた3Dの立体モデルを見ることも、現在の3Dモデルと過去の3Dモデルを並べて比較することも可能ですが、これは単なる重ね合わせなので、切断といった応用能力がなくてもできることのようです。

 株価チャートには色々な種類がありますが、優秀な方が多くおられるので、出来ることなら3次元+1(認知・識別)を必要とするようなチャートを考え出して欲しいと思っています。私には全く出来ない範疇の事柄だからです。もし出来ても私には観れないかもしれませんが、興味があることは事実です。ボリンジャーバンドやパラボリックは所詮2次元の簡易指標です。ローソク足で「赤三兵」「三尊天井」などというのは子供だましの単なる表示に過ぎません。このようなものを当てにしてはシステムトレードが進んだ現在、格好の獲物になるだけです。いずれにしても、3次元で物事を考え発展させられる人を羨むばかりです。私はこの能力が欠損していることで多くの分野を考えられずに狭い範囲の世界をみているのでしょう。

<サイト管理人> 2018年 6月26日記述



  【思い起こせば高校時代の友人同士で始めた株式投資と現在】第484回

   私とその友人3人が同時に株式投資を始めて随分経ちました。私を含む合計4人の投資パターンと現在の状況を記してみようと思います。4人共現在までに不動産は所有しておりません。以下、参考になればと思います。

・Aさん
 投資金額は20万円。実際に売買するのは10万円で、残りの10万円は予備費として証券会社の口座に保管していました。投資開始時の預貯金や保険商品を併せた資産は8桁前半です。投資開始より取引時間中は携帯電話が手放せなくなり、勤務時間中も頻繁にトイレ休憩を取ってデイトレードを行っておりました。その問題を自覚して投資開始からちょうど2年で引退しました。口座の資金はMRFになったまま放置しております。現役時代は値動きの良い銘柄を好んだ投資を行い、ファンダメンタルズは考慮していませんでした。銘柄に対する思い入れは無かったのですが、得手・不得手(相性の良い悪い)銘柄はありました。具体的な取引の手法は、日経並びにTOPIXが比較的大きな下げで始まった日の寄り付きから1時間後に買い入れを行い、昼休み時間に売却する方法が基本です。ロスカット出来ずに翌日に持ち越すケースもありましたが、翌日に持ち越すケースでは夜間先物価格が気になり、睡眠不足に陥ることもしばしばでした。投資を行っていた2年間でのリターンは約150%になっています。なお、投資金額が小さいのはギャンブル的な要素を強く株式投資に感じていたからです。

・Bさん
 投資金額は預貯金等を含む総資産の5割の7桁(投資開始時のまま増額せず)でした。短期トレード+長期トレードを基本として投資を行っていましたが、投資開始から5年程度で引退しました。地方公務員であることから、副業規定にかかるのではないかと案じてのものです。口座そのものも解約済みです。5年間でのリターンは110%程度でした。買い入れ対象銘柄は日経平均採用銘柄並びにTOPIX400選定銘柄に絞っており、純資産倍率を重視した投資で、テクニカルな部分はあまり考慮しない手法でした。特定銘柄に対するこだわりもなく、株主優待や配当性向なども考慮しておりませんでした。

・Cさん
 投資金額は預貯金等を含む総資産の3割の8桁で開始しました。保有期間は数日~数週間の短期トレードを基本として、買入れは総資産の3割分を4分割してバスケット的に買い下がるリバウンド狙いの投資方法をとっています。買い入れのタイミングは年に1度~3度程度しか起こらない為、ほぼ年間を通じてノーポジションとなります。総資産が年齢と共に増えている為、投資に回す金額も比例的に増加していくことになり、投資原資が一定でない為に計算しずらい部分はありますが、現在までに年率で3%程度のリターンを得ている計算になります。成り行き注文が基本で、現在も投資を継続して行っております。あらゆる金融商品はリスクの方がメリットよりはるかに高いと考えています。

・Dさん
 投資金額は預貯金等を含む総資産の9割の8桁で開始しました。預貯金は現在も投資開始時と同じ7桁前半のままで、証券会社の口座を銀行の預金口座代わりに使っております。配当性向が高い銘柄や株主優待が好きで、含み損を抱えても損切りすることはありません。現在までの投資リターンは配当分を含めて10%程のマイナスになっています。短期投資を行いたい希望はありますが、結果として長期投資になっている部分があります。このバスに乗り遅れるな的な感覚が強く、投資開始時からポジションの無かった期間はありません。利益が出ると比較的小さいパーセンテージで利確し、そのまま現在ウォッチしている銘柄を買い入れ、損失は抱え込みます。ジャスダック等の認知度の低い銘柄をピックアップし、好んで買い入れる傾向があります。ファンダメンタルズは一切気にせず、ローソクチャート+記憶における過去の株価との比較で株式を購入するため、財務諸表も確認しません。勤務中の昼休みに株価の確認並びにトレードを行うのが日課となっています。

 結果はともかくとして、このような人がいると参考になればと思います。
 なお、4人共、日経平均ないしTOPIX連動型の投資信託を購入していれば、現在値でトータル170%以上のリターンが得られた時期に投資を開始しております。そういう観点からは全員投資に失敗しているとも言えるでしょう。

<サイト管理人> 2018年 6月27日記述



 【内閣府試算のマクロ経済プランの楽観性について考える】第485回

   2018年1月に内閣府が出したマクロ経済プランは、日本経済の将来を「成長実現ケース」と「ベースラインケース」の2つのシナリオで示しています。私なりにこの内容を観ましたが、あまりにも楽観的というか、現実離れしていると感じさせられました。

 よろしれば内閣府HPに掲載のデータをご参照ください「中長期の経済財政に関する試算」

 A.成長実現ケース(以下、Aと表示)
 B.ベースラインケース(以下、Bと表示)

 Aプランは「経済再生が発現することで、日本経済が昭和の終わり頃になる」シナリオ、
 Bプランは「現在の経済成長率並みで将来をシミュレートした」シナリオです。

 AもBも2019年10月に消費税が8%から10%へ引き上げることを前提としており、「経済成長を伴う税収の増加」見越したプランですが、2019年10月以降の消費税増税の影響が一時的なものとはいえ過小評価されているようです。また、これまでの国の一般会計税収を観ると、2016年度に5.8%減少しており、こうした原因をも未来予測に盛り込むべきと思います。なお、2017年度の一般会計が63.6兆円であるのに対して、Aプランは2027年度に89.8兆円、Bプランは79.1兆円になっています。そもそも政府は40年債まで発行しているのですから、2058年度までのマクロ経済プランを示すべきです。おおよそのパーセントで示せないものでしょうか?リーマンショック級の経済変動はいつ起こるかわかりませんので、各年度の詳細予測ではなく、40年先の実現可能なビジョンを発信してくれれば良いのです。そうすれば大抵の個人も未来に対する備えが出来るとともに、過剰な貯蓄を行わず、娯楽や投資に資金を振り向けることなどから過去と似た信用想像社会を実現できると思います。

 さて、話を戻してもう少し指標を出しますと、Aプランでは名目GDPが2017年度に550.3兆円であったのが、2021年度には600兆円を超え、2025年度に700兆円を超え、2027年度に約757.9兆円になるようです。言い換えると名目ベースでは2018年度から2027年度にかけて年平均で3.5%も成長することになります。さらに興味深いことは、内閣府は毎年マクロ経済展望を示し、その実現時期を1年ずつ先送りすることで経済政策に対する責任逃れを計っています。参考までに記しますと、小泉政権(2002年~2005年度)下では名目GDPは年平均約0.7%成長、民主党政権下(2009年~2012年度)では年平均0.2%成長、これまでのアベノミクス(2013年~2017年度)下での年平均2.1%成長ですから、今回の予測モデルが如何に楽観的か解ると思います。これから労働者人口が減少する中でどういう根拠を持ってこういう経済予測をしているのか理解できません。

 仮に今後の期待インフレ率を2%に設定すると、A,B予測が成り立ちます。しかし、名目GDPの膨らみや税収の膨らみは貨幣価値の下落を伴いますから額面上になるだけでなく、生活自体の豊かさには繋がりません。さらに、名目長期金利が上昇すると、長期国債の価格は大きく下落します。現在の低金利で450兆円に程度の長期国債を保有している日本銀行は巨額の損失を被ります。この場合10兆円程度の損失を覚悟すべきです。政府の財政補填政策であるアベノミクスが中央銀行たる日本銀行を債務超過に追込みかねないのです。もちろんこのような事態に陥れば米国やその他の国々から日本への資本移動が生じ、円高状況が生じるでしょうから、輸入物価の抑制、期待インフレ率の低下といった揺り戻し現象もみられるでしょう。
 「インフレ+円安」のセットでは国民の生活そのものは豊かになりません。GDPデフレーターがゼロ付近にあり、緩やかな円高+適度な低金利といった条件が揃えば名目GDPなど気にせずとも良いと思われます。額面だけの成長値に捕らわれることはあまりにも古い考えではないでしょうか?個人的には増税に反対ではありませんが、それに見合う社会保障を実現することと、構造改革を伴う財政健全化を早期に実現することが行政の使命と思います。あらゆる額面を膨らませてプライマリーバランスと国債の利払い分を税収増でクリアすることには意味がありませんし、成長前提の未来予測は危険です。短期的には大国間の関税問題やテスラの経営問題、原油等資源価格の上昇リスクが存在しており、中長期的には発展途上国の先進国化に伴う日本の貧困化などが存在しております。

<サイト管理人> 2018年 6月30日記述



 【エンゲル係数から見る2人以上世帯の生活実感はどのようなものか】第486回

   エンゲル係数という言葉を耳にしたことがある人も多いと思いますが、この係数は家計の「消費支出」に占める「飲食費」の割合のことです。ドイツの社会学者であるエルンスト・エンゲルが提唱した指標ですが、現在までに広く用いられるようになりました。

 飲食費は生存するための欲求に分類される為、生きる上で最もベーシックな消費活動とも言え、極端な節約が困難であることから、指標を算出する要素としては適当とも言えます。ですから、エンゲル係数が高いということは支出に対して飲食費が占める割合が高くなり、生活水準が低いと考えられています。ただ、国柄も影響しておりますので、国家間の比較には向かない指標とも言えます。アメリカなどは20%程度で、イギリスは25%程度、トルコが35%程度なにっておりますが、各国の食文化として外食が多用されるか、飲酒を好むか、農業国で食材自体が安いかなどの要素が複雑に絡んできます。
 なお、日本でエンゲル係数を算出しているのは総務省で、「家計調査」の一環からエンゲル係数を求めています。標本調査であり、全国にある約4500万世帯から約9000世帯を無作為に選んで調査しております。

 そんなエンゲル係数ですが、2016年平均は29年ぶりの高水準になっており、現在も横ばい状態が続いているのです。これは1987年以来の値です。あまり実感がわかないところもありますが、当時の平均年収は385万円でした。なお、2017年は約420万円ですが、係数自体に所得金額は関係ありませんし、1987年には消費税もありませんでした。単純比較は難しいですが、生活水準が1987年に戻ったともいえます。

各年次とエンゲル係数
2007年 23.0%
2008年 23.2%
2009年 23.4%
2010年 23.3%
2011年 23.6%
2012年 23.5%
2013年 23.6%
2014年 24.0%
2015年 25.0%
2016年 25.8%
2017年 25.7%

 2008年のリーマンショック後の若干の係数上昇は所得の減少が原因と言えますが、2014年からの係数の大きな伸びは明らかに円安によるコストプッシュインフレが生鮮食品等に及んだ結果と言えます。それまでは23%台で推移していたものが2015年に25%を超えてから高止まっています。政府・日銀の金融緩和政策によって、2013年から急激に円安方向に振れ、輸入品を中心に食料品の値上りが続きました。その一方でサラリーマンの収入はそれに見合うだけ増加しなかったことも事実です。現在の金融政策は庶民生活を豊かにはしていません。もちろん飲食代も含め、家計の消費全体が縮小していることも考えなくてはなりません。そういう意味においてエンゲル係数は万能ではありません。一方で2人以上の世帯の貯蓄残高が増加している現実にも目を向けなければなりません。全体を通じて言えることは未来に対する漠然とした不安と、所得の伸びが食料品の物価上昇に追いついていないことでしょう。そして、一方では技術革新により電化製品やIT機器の価格下落が進んでおります。液晶テレビを見ても解るように、1インチ1000円を切っているのが現状です。10年前のパンやバターの価格と液晶テレビ価格を思い出してみてください。

<サイト管理人> 2018年 7月2日記述



 【安いと感じる株価とスーパーのチラシに騙されないために】第487回

   多くの人にとって毎日気になるのが新聞の折込みチラシです。最近は新聞を取らずネットチラシ(Shufoo!)などを見ている人もおられるでしょうが、内容は同じものになります。
 チラシ作りにはZの法則やアンカリングといった人間の行動学・心理学に基づいた構成方法があるのですが、今回のブログではそうした話をせず、実際のチラシから簡単に見て取れる文言から考えたいと思います。サンプルは静岡県にある某スーパーマーケットのチラシです。

1.日替り特売品
 日替りで指定された商品がお得な価格で売出されるケースです。心の綺麗な人はチラシに載っているという事実から安いものだと思い込み買ってしまうケースが多々あります。原因は通常価格を忘れていることが第一でしょうが、その日が特売日に該当しなくても錯誤で商品を買ってしまうケースもあるようですし、チラシが折込まれる前日と同じ価格でも掲載されただけで売れ行きが良くなることが結構あるようです。ちなみに、豚コマ肉の脂身の割合が普段より多くなっていませんか?大根が一回り小さくはありませんか?ちょっとした違いでも仕入れ値は大きく違っており、スーパーマーケットの利益率は通常よりも高い場合があるのです。

2.冷凍食品3割引
 これは個別商品、たとえばキッコーマンの丸大豆醤油といった特定の商品ではなく、冷凍食品がすべて3割引ですとか、海苔全品2割引、漬物・キムチ・梅干全品2割引など、指定の品目全体を安くする「品目(カテゴリー)特売」を指しています。これは全国展開のイトーヨーカドーなどでもよく行っています。なお、この場合、産地からの直送品やオーガニック系の商品も対象になりますからお得な買い物もあると思います。ただ、いつも気になるのが「店頭表示価格の○割引」や「当店表示価格の○割引」という注釈です。店頭表示価格にせよ当店表示価格にせよ、対象商品にメーカー側から定価が示されていなければ表示価格は小売店の自由になるということです。伊丹十三監督の「スーパーの女」という映画で紹介されていたとおり、今でも存在しているケースは特売日ないし期間に合わせて表示価格をすり替えることも行われております(※イトーヨーカドーのことではありません)。日頃から価格をチェックしていないと判断が難しい商品も多いのではないでしょうか。

3.お1人様○点限り
 数量限定、お1人様○点限りという商品の売り方です。限定といわれると思わず手を伸ばしたくなるのが人情です。安いかどうかに関しては1,2と共通の部分もありますが、基本的には安く手に入れられる可能性が高いセールでしょう。昔はこうした特売品を目当てにユーザーが開店前から並び、開店早々に売り切れることもありました。最近は数量限定を表示していても、多くのスーパーマーケットでは営業中に対象商品を補充し続けるケースもあります。午後の2時頃、店が比較的空いている時間帯に行っても商品が存在している可能性もあるわけです。

4.メーカーフェアー
 メーカーがスーパーマーケットと協力して値下げを行うセール方法です。このメーカー協賛フェアーでは普段目にしない商品(開発・製造したて)に出くわす可能性があります。なお、フェアーへの協賛メーカーはそのスーパーマーケットが主要な顧客となっているケースがほとんどですので、普段からそのメーカーの商品が他店よりも安いかもしれません。

5.88円均一
 少々心理学的な要素が入ってしまいますが、数字は切りのいいものよりも端数を利用した方が説得力も出ます。「0」や「5」の数字を末尾に持って来ず、中途半端な数字を並べると信憑性が増します。端数効果のひとつです。わずか1円や10円の違いでも驚くほど安いと感じられるのはこの効果によるものです。商品の高い・安いに関しては何ともいえません。

6.イベント抱き合わせ型
 この時期ですと七夕フェアーになりますが、クリスマスセールやお盆のセールといった具合に一年中行われているものです。商品に華を持たせる為にはイベントを結びつけると効果が大きいようです。冬場なら「雪だるまのイラストに鍋の具材」などが定番になってきます。こちらに関しても商品の高い・安いに関しては何ともいえません。


 1から6までチラシのパターンを記してみましたが、チラシというのは奥が深いものだと考えさせられますし、西友やイオン、ダイエー、イトーヨーカドーもチラシ無しに日頃から日用品を一斉値下げしております。これまで値下げを行わなかったセブンイレブンなどのコンビニエンスストアも値下げを行っています。裏を返せばそれだけ消費者の財布のヒモが固い今日この頃です。
 その一方、かつてあった酒の安売りに対する規制でも分るように、値引きの企業努力に対して国が製品価格に介入する問題も存在します。「1円タマゴ」や「1円もやし」といった原価を下回った異常な安売りや、メーカーに対して圧力をかけるような業者を公正取引委員会がチェックするのは当然ですが、それ以外の部分で行政が価格を統制することはあってはなりません。インフレ目標2%を達成することが目的化している現在、いろいろな思惑もあるのでしょうが、製品の価格は需給関係で自然と決まる側面があります。小売業者は政府のインフレ目標のためにチラシを掲載しているのではなく、冷静に消費者の動向を観ています。こうした民間の競争を阻害するような空気はいかがかと思います。

 さて、ようやく話を株式に振りますが、今ウォッチしている銘柄は安値でしょうか?例えば日本トラスティ信託や日本マスター信託、もしくは海外の投資機関が株価を考えず一定期間で売り切ろうとしているお買い得な銘柄でしょうか?それとも事件銘柄でしょうか、事故銘柄でしょうか?増資を控えている可能性は無いでしょうか?業績の下方修正が発表される前ではないでしょうか?
 特定銘柄の株価の高い・安いは簡単に判別できません。だからこそ日経平均株価やTOPIXとの連動性を重んじるべきであり、リスクを分散させる為にバスケット買いを心掛けるようにすべきと思うのです。指数の動きから離れた値動きをする銘柄には何らかの理由があり、後になって個人投資家にも解るといったケースがほとんどです。
 チラシと同じで時系列的に捉えられる目と実際に店頭販売されているもの(現在値)の価値を測れる目が問われてきます。

<サイト管理人> 2018年 7月3日記述



 【建設用重機レンタル業界の好調ぶりとこれから先の状況について】第488回

   建設用重機レンタルで業界首位のカナモトは2017年10月期の決算で売上高1584億円(前期比9.6%増)、純利益が過去最高の107億円となっており、一株当たりの利益額も過去最高になりました。業界2位の西尾レントオールは、2017年9月期の決算で売上高1235億円(前期比6.6%増)、純利益は72億円になっています。こちらは売上額も純利益額も過去最高レベルにあります。ただし、一株あたりの利益率は2015年9月期がピークとなっており、今期の数字が気になるところです。とりあえずのところ、業界は大手を中心に業績は概ね良さそうです。

 経済産業省のHPを見てもわかりますが、建設用重機関連のレンタル年間売上高は東日本大震災以降に活況を呈しています。2016年には10年前の約1.5倍の1兆3000億円程度に増えました。まさに右肩上がりです。それに対して建設そのものへの投資額はこの何年か微増に留まっており、重機レンタルの売上高とは対照的になっています。

 建設用重機のレンタル業が良い業績を上げている裏には、スーパーゼネコンを頂点とした大中小の建設会社が経費削減の一環としてレンタルを多用していることが挙げられるでしょう。毎日使うものなら所有しても計算が合うかもしれませんが、年中フル稼働する重機はまずありません。天候の問題があるからです。保管スペースや消耗品の交換費用、場合によっては車検費用や税金、金利、減価償却費などを考えると、ノーメンテナンスで使いたい時に使いたい場所で自由に用いられる重機はレンタル費に相当する価値があると思います。また、ちょっとした場所で見かける移動式クレーン車(13tラフター)でも購入費用は1000万円を簡単に超えます。建設用重機は想像以上に値段が高いのです。
 また、レンタル重機が増える理由は上記プラス人件費の問題があるでしょう。人力で作業できないケースを除いて考えると、重機をレンタルせず、人を集めて作業を行う方法もありますが、人件費の高騰(特定業界の限られた地域)からするに重機を利用して効率的に少人数で作業を行う方が良いのでしょう。

 なお、都心並びに首都圏の再開発案件は2019年後半から2020年の前半にピークになると予想されていますので、これから商業ビルや公共施設などの工事が最終局面に入ってきます。そうしたことから、現在、この地域のレンタル重機がフル稼働状態に入っていると想像されます。私の住む静岡県の中核都市のベッドタウンではそのような状況を見ることはできませんが、多くの重機が対象区域内の営業所に移動されている可能性もあります。

 ここまで書いてみますと、レンタル業者の未来は安泰といった感じも受けますが、熾烈な価格競争(レンタル代金)が展開されています。レンタル業者に対して建設業者である元請会社からの値下げ要請はかなり厳しいもので、レンタル会社が簡単に需給に応じたレンタル価格をつけられない状況が続いています。建設業者からすれば各工事の予算は決められているので、よくある追加工事や資材価格の上昇分を何かで穴埋めして相殺しなくてはなりません。結局その矛先はレンタル業者向けられるのです。以上から、建設業者とレンタル業者間では値引きが常態化し、最終的には業者間の消耗戦へと繋がるのです。また、レンタル業者自身にも毎年設備投資が求められます。最新の重機を揃える必要があるのです。騒音の問題や省エネといったスローガンから定期的な重機の導入や入替えが求められ、減価償却負担が常につきまとうのです。

 こうした状況で利益を確保するためには、営業拠点を増やし建設用重機の稼働率を上げるしかありません。そういう意味で冒頭に記した大手上場レンタル会社は豊富な資金力から中小業者の買収を頻繁に行い、シェアを伸ばそうと試みているのでしょう。受注戦争、値引き戦争の先にあるものは、「少数の大企業が市場を支配しながら、互いに競争しているような市場構造」なのでしょう。カナモトの業績を見ても2017年決算では売上を9.6%伸ばしましたが、営業利益率は前年と同じで約10.5%の横ばいになっています。直近の3年間で観ると売上げは伸びても営業利益率は伸びない状況が続いています。会社の規模が大きくなった分だけ売上と営業利益率が増えたのです。

 そのような中、2017年12月には建設重機レンタル業で4社が連鎖的に倒産する事案が発生しています。中堅のPROEARTH(プロアース:負債額約150億円)です。この会社は2007年に設立された若い会社で、建設重機・車両販売とレンタル事業を並行して行い、売上を飛躍的に伸ばして2017年度は約180億円にまで達していました。プロアースがこれほどまでに成長したのは東日本大震災の復興需要を取り込んだためとされております。解体用の特殊重機を保有していたことも切掛けとなりました。結果的には先述の通りで震災復興工事が終盤に差しかかると、買収も含む無理な拡大策が裏目に出たのです。

 このようなケースはこれからも多くみられると思います。東日本大震災の復興工事がひと段落した今、再開発に現状ほどの予算が組まれない状況になれば、建機の稼働率と資金繰りのバランスが大きく崩れます。マーケットが急速に縮小することは無いにしても、業界そのものは成熟しており、未来の環境が良いとは思えません。今、生き残りの線上で各社はもみ合っているのです。どこが残り、どこが淘汰されるかの予測はつきませんが、いずれにしても少数の大企業が建設用重機レンタル事業を支配する形になると思います。

<サイト管理人> 2018年 7月4日記述



 【バブルの定義とこの言葉をあまり使わない理由について】第489回

   バブルの定義を明確に答えられる人は意外に少ないと思います。仮想通貨や原油市場は別として、内在的に価値を有するものは必ず見合った価格がつきます。しかし、価格が価値から著しく乖離する場合があります。その時の価格と価値の差分がバブルになります。
 単に日経平均やTOPIXを見て、「過去から比較して高い水準だからバブルである」といったことにはならず、高値を更新している銘柄がバブルというわけでもありません。価格に現在の資産価値と将来の成長分が適正に織り込まれているのなら良いのです。逆に、安値を更新しているからバブルではない…とはならないのです。

 ここで問題となるのは、適正株価とは言っても当てにならない部分が多くあります。将来の成長性はテクノロジーの進歩や気象条件といった外的要因に大きく左右されますし、資産価値といっても設備や有価証券が含まれているのです。10年前の今頃にサブプライムローン債が破綻しましたが、こうした要因によって経済が大混乱し、金融・証券系の株価が下落し、製造業やサービス業、そして市場全体の株価が下落する恐慌に繋がりました。大手企業ほど株式を持ち合いますから、資産価値はスパイラルに減少しました。BPSが6000円だったソニーがサブプライム後に3000円になったと記憶しています。よって、資産価値も長期的にはあてにならないのです。

 では、株式の価値をどうやって計算するのか?ですが、答えは「解らない」です。先述の理由だけでなく、株の価値はケースバイケースでしょうし、同じモノを見ても人によって価値の見積りが違ってきます。私のように絵画に何の興味がない者がピカソの絵に何十億円の価値を見出すことは出来ません。
 一応、株式は商法において付随する権利も規定されていますし、投資・投機以外の目的で買う人は少ないことから価値の計算方法は限定されます。ファンダメンタルズ的に言えば「純資産法」、「収益還元価値法」、「配当割引法」などの価値計算方法があります。しかし、あくまで「現在までにおける」という限定付きの計算になってきます。

 株式投資から少し離れますが、この数年、賃貸用不動産への投資が盛んになっていますが、この場合は大抵収益還元法で投資価値の計算を行います。期待収益から資産価値を逆算する方法です。収益還元法を簡単に説明すると、賃貸用ワンルームマンションの家賃収入から管理費・減価償却費等の経費を差し引いた純利益が100万円/年で市場利子率が4.0%だったとするとこのマンションの価値は2500万円になります。計算は簡単で、以下の通りです。
 <マンション価値=100万円/4.0% ⇒ 2,500万円>
 都心では収益還元法で見て割高なマンションがほとんどで、0.5%程度の利回りの投資用マンションに1.5% 以上の利息で借りた資金を回しているのですから採算があうはずはありません。
 当たり前の話ですが、投資家が金融機関からお金を借りて賃貸用不動産を買えば金融機関はその不動産を担保に取ります。この投資は不動産価格が上がる限りは成立します。しかし、不動産価格が下落し始めると大問題に繋がります。端から賃貸収益がマイナスの中で不動産を売却して返済に充てようとしても借入金が残るのです。それを嫌っているうちに返済が滞り不動産価格は更に下がり、金融機関は担保権を行使します。しかし、担保不動産は何十%も値下がりし、売却後も貸付金を回収できず焦げ付いてしまうのです。
 「不動産価格の方が貸付金額よりも高かったのに…」などという投資家もおられますが、これもバブルが影響してのことです。バブルに気づかず、不動産の適正な価格計算を怠った金融機関も悪いのでしょうが、そのような投資を行なおうとした個人に責任はあります。

 バブルというのは、不動産投資ではおおよそ計算がつきます。現在の都心を初めとしたマンション価格はバブル状態といえるでしょう。しかし、株式投資に関しては明確にバブルと断言することはできません。冒頭に書いたように、それぞれの企業の成長性は数値化できず、外的要因に大きく左右されるからです。そして、大手企業になるほど株式の持合いが多くなりますから、株価の上昇と時価総額の関係から適切な資産額が計算できないという問題もあります。ですから、私は株式に関してはバブルという表現をあまり用いません。せいぜい過熱状態という表現で終わります。その代わりに長期投資は行ないませんし、年間を通じてほぼノーポジションを通しております。

<サイト管理人> 2018年 7月5日記述



 ヤオハンの世界戦略と大いなる失敗から我々が学ぶこと】第490回

   ヤオハンという言葉を聞いて「潰れたスーパーマーケットでしょう」と答えるのは30歳以上で東海地方にお住まいの方ではないでしょうか?長く株式投資をされている方であれば地域を問わずご存知の方もおられると思います。1997年に倒産し、その後マックスバリュー東海が国内の事業を引き継いでおります。

 ヤオハンの起源からお話しすると長くなりますので、創業家の出身で拡大路線を展開した和田一夫氏が代表に就任してからの流れを記してみようと思います。

 1962年に株式会社八百半デパートが設立されるのに併せて和田一夫氏が社長に就きました。八百半デパートは熱海に1店舗を構えるだけでしたが65年頃から支店ネットワークを広げるようになります。裏にあった考えとしては、同じシステムの店を各地で開業し、本社で一括管理すれば効率が上がり、売上だけでなく利益も伸ばせるというものでした。ネットワーク化に際してはまず膝元の伊豆(伊東、下田、松崎、土肥、修善寺)を固めて、その後三島や沼津、富士に展開するもので、これは現在の「スーパーあおき」の展開に似ております。実際、このネットワーク化は順調に進み売上も右肩上がりに伸びました。

 こう書くと、八百半デパートの未来は明るく、全国制覇も可能に思えますが、当時はすでにダイエーやイトーヨーカドー、西友といった大手スーパーマーケットが全国展開に乗り出して地方のスーパーマーケットを買収していたのです。そういう意味でヤオハンは一歩遅れをとっていました。1970年頃のダイエーの売上が1000億円であるのに対しヤオハンは30億円でしたから、大手スーパーマーケットが静岡に積極的に進出してくればヤオハンも呑み込まれる運命にありました。逆に、ヤオハンがダイエーなどの大規模マーケットになろうとすれば東京や名古屋、大阪、福岡などへ進出する必要がありますが、事業規模からして価格競争で負けてしまします。

 そこで一夫氏は未開拓の海外へネットワークを広げようと考えたのです。国内で激烈なシェア争いを繰返し消耗戦に陥るよりも、競争のない国に展開する方がメリットがあると考えたのです。海外へ積極的に進出し成功を収め、そこで調達した資金を日本国内に還元する方法を選択しました。スズキ自動車もインドへ早い段階から積極展開しましたが、これに似ているといえます。和田氏は発展途上国に注目し、71年にはブラジルへ進出しました。そしてこれを契機にシンガポールやコスタリカといった具合にネットワークを広げていったのです。

 ブラジルにおける経営は順調だったのですが、第一次オイルショックが発生し、八百半デパートが店舗ネットワーク拡大に借入金を増やしていたことと重なり、またたく間に資金不足に陥ります。75年にはブラジル国内でも日本以上のインフレが発生し、ヤオハン(ブラジル法人)も存続の危機を迎えました。ヤオハン(ブラジル法人)は,八百半デパートへの資金援助を試みましたが本体の経営も危ぶまれる中だったことから援助は叶いませんでした。結局ヤオハン(ブラジル)は倒産したのですが、進出から6年後のことでした。日本国内ならびにブラジルで大きな失敗した八百半デパートは,銀行団の信用を無くし、借入も自由にならず、手形も不渡り直前にまで追い込まれました。

 しかし、石油ショックの収束やインフレ率の低下が八百半デパートを持ち直させるとともに、ヤオハン(ブラジル)の清算が無事完了したことで、82年に名古屋証券取引所第2部、86 年には東京証券取引所第1部への上場を果たしました。上場による資金調達メリットを最大限に生かし、八百半デパートは拡大路線をひた走ります。国内のネットワーク網を拡大するとともに、タイ、マカオ、香港、マレーシア、中国、イギリスといった具合に店舗を展開していきました。
 91年にはヤオハンジャパンと社名を変え、90年~94年に転換社債を大量に発行することで600億円以上を市場から調達しました。90年のヤオハンの自己資本は390億円だったことから、この600億円の規模の大きさが解ります。そして、ヤオハンは調達資金を国内及び諸外国の百貨店やスーパーマーケット事業へ割当て土地・建物を固定資産としました。これについてはバブル崩壊時期とも相まって、銀行団が融資に反対した結果、ヤオハンサイドが転換社債で資金を調達して実行したのです。そして、95年にはアジア最大の百貨店をオープンし、96年にはヤオハングループの本社機能を上海へ移転しました。

 問題は、転換社債による資金が実質的に借金になりうるということです。普通ですと転換社債は期日を迎えると株式に転換されるのですが、条件によっては償還する必要が出てきます。ヤオハンの場合は調達から5~10 年で毎年70~190億円ずつの償還を迫られました。投資先の各社も大半が赤字続きで、資金の回収はままなりませんでした。97年の3月期決算でヤオハンジャパンはグループ企業に対する株式評価損や貸倒引当金などで370億円の特別損失を計上ました。結局、設備投資に見合うだけの収益性はなかったのです。資金繰りの悪化や経営難の噂はまたたく間に広がり、格付引下げ,株価の急落といった具合に世の中に知れ渡ることとなります。
 99年5月には96 億円の償還期限が迫りました。この時ヤオハンジャパンはダイエーグループへ採算の取れている優良店舗の16店を売却しました。これらはヤオハンジャパンの総売上の4割を生み出していましたが、売却の代金を償還資金に当て資金繰りし易くしようとしたのです。しかし、これらの店舗には銀行の抵当権が付いていたため売却代金の大半は銀行借入の返済に回りました。店舗売却はヤオハンジャパンに何のメリットをもたらさなかったのです。その後、店舗の減少に伴う売上げの減少や収益悪化、在庫処分損などにより状況は一層悪くなったのです。
 ここまで来ると運転資金の不足から仕入すらままならず、商品陳列棚にも空きが見られるようになりました。私もこの光景を目にしています。結局97年9月18日ヤオハンジャパンは,静岡地方裁判所へ会社更正法適用を申し立て、事実上倒産しました。最後まで銀行の支援はありませんでした。私は当時学生でしたが、大きなショックを受けたことを思い出します。

 銀行が悪いとは言いませんが、早い段階で何らかの手を差し伸べるべきだったと思います。また、和田一夫のようなグローバルな視点に立てる経営者ともなれば転換社債やワラント債を用いて資金を市場調達したいと考えるのが普通でしょう。失敗はヤオハンが企業規模に対して過大な転換社債等を大量に発行したこと、そしてそれが株式に転換されず償還を求められるような株価・業績になってしまったこと、過剰なまでの店舗展開を行ったこと、経営が非効率だったことなどです。しかし、それはダイエーやイトーヨーカドー、西友といった巨大マーケットチェーンに静岡発の弱小企業が立ち向かうことを考えれば必然だったように思います。リスクをとりすぎた結果としての失敗だったと思います。私は同県人としてヤオハンならびに一夫氏の偉業を忘れられません。そして、これから先もこうしたグローバルに展開する企業が出ることを願っています。

<サイト管理人> 2018年 7月6日記述



 【投資の目安となる各種利益について理解しましょう】第491回

   四季報の財務諸表などを見ると、営業利益、経常利益、当期純利益など、何種類もの利益が存在ており、いったいどの利益が重要なのか?と感じる人もおられるのではないでしょうか。そしてこの違いを明確に答えられる人は意外に少ないことに驚かされます。身の回りで明確に答えられるのは営業、審査をしているバンカーくらいでしょうか。渉外をしていた金融関係の団体職員は答えられませんでした。そこで今回のブログではこれらの意味と計算方法をまとめてみます。参考になれば幸いです。

1.売上総利益
 これは製品の売上げからその製造や仕入に掛かった費用(売上げ原価)を引いただけのものです。粗利益とも言われます。ちなみに、売上原価は製造に掛かる全ての費用で原材料の他、役員や従業員の労務費、また工場の光熱費や減価償却費などの経費まで含みます。
「売上総利益=売上高-売上原価」

2.営業利益
 営業利益は算出された売上げ総利益から販売費及び一般管理費を引いたもので、会社が本業で得た利益になります。これだけでは解りにくいと思いますので、もう少し具体的に記しますと、販売費及び一般管理費というのは販売業務や一般管理業務(製造・販売以外の事務作業)に掛かるすべての費用で、製品の販売手数料や保管費用、運搬費、荷造費、広告宣伝費、売掛貸倒れ損失、役員並びに従業員の給料、交際費、旅費、光熱費・減価償却費などが該当します。
「営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費」

3.経常利益
 本業並びに本業以外も含めた会社の業績を最も反映する利益となります。通常会社には預金や借入金があり、場合によっては株式などの有価証券を有しており、営業外の収益や費用が発生してきます。営業外収益は預金や有価証券から得られる利息、配当金、有価証券を売却したときに生ずる売却益などです。しかし、売却損が発生する場合もありますし、借入金の支払利息が大きい会社がほとんどでしょう。
「経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用」

4.税引き前当期純利益
 臨時損益(固定資産売却損益、火災損失、保険差益など)や前期損益修正(過年度引当金過不足修正額、過年度減価償却過不足修正額など)を含めた総合の利益になります。営業並びに経常も黒字なのに税引き前当期純利益が赤字という会社がありますが、こうしたことが裏にあるのです。
「税引き前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失」

5.当期純利益
 この純利益が配当金や役員賞与金、内部留保として保管されるのです。株主や役員からすれば法人税並びに住民税の税率が低いほど利益剰余金を膨らませることが出来ます。近頃は与野党を問わず内部留保を問題としますが、会社は法人税を支払った後のお金をプールしているのであり、もしも内部留保に課税をするなどという暴挙に出ればあからさまな二重課税となります。日本は以前のコラムに書いたとおり、ただでさえ課税関係が複雑で、世界一の重税国家なのです。
「当期純利益=税引き前当期純利益-法人税・住民税」

<サイト管理人> 2018年 7月8日記述



 【株式の持合いとその問題点について】第492回

   株式の持合いは日本における慣習ともいえ、1989年の株式バブル崩壊までは当たり前のように行われていました。会社同士がお互いに一定の株式を所有するものです。持合いは昔から是非・賛否がありますが、今回はその問題点を考えてみようと思います。意外に難しい問題で、考えるほど?がつきます。

 株式の持ち合いは信用創造にも似た不思議な資産の膨らみを生みます。まず、持合いのサンプルとして各々が株式を発行して、お互いが割当てられるケースを考えます。
 資本金10,000 千円ずつで2 つの株式会社が作られたとします。ここではα社とβ社とします。この時点においては各々の持合い関係に問題はありません。その後、α社が10,000千円分の新規に発行しβ社に割当てるとします。この場合β社は手元資金の10,000千円をα社に支払うのが普通です。ですから、α社の現金資産は20,000千円に増加します。その一方でβ社の現金が減る代りにα社の株式10,000千円が加わることからも資産の総額そのものは変わりません。

 次に、β社が10,000千円分の新株を発行してα社に割当てるとします。この場合、α社は現金10,000千円をβ社に支払います。するとβ社は現金資産10,000千円が加わることからα社の株式10,000千円と併せ資産総額が20,000千円に増えます。その傍ら、α社は現金が10,000 万円減る代りにβ社の株10,000千円が加わるので、全体の額は変わりません。

 ここでα社、β社の間に株式の持合いが起こりました。両社共に資産が20,000千円ですから、設立当初の2倍になっています。しかし、手元の現金は設立当初の1,000 万円から変わりはないのです。もちろん、現金の受渡しの必要も無く、帳簿だけの話であり、株券を互いに渡しただけなのです。

 このようなことを何度も繰返すとα社、β社共に資産を無限に増やせるのです。新株の発行を伴う株式の持合いでプライオリティを得るのは経営者です。故意にする会社間で株主になることで、既存の株主の権限を大きく弱体化でき、経営者自身の保身が叶うのです。
 資金を用いずに資本を増やすことで、見せかけではありますが、簡単に会社の財務内容を改善できるのです。さらに、新規に株式を発行しても市場に回りませんから需給バランスも保て、株価を保つばかりでなく、転換社債の発行や公募による新株発行といった資金調達の機会を残せるのです。さらに、実際の事業内容は変わらないにも関わらず、既存株主の持株比率が低下するため、その権利や権限が希薄化されるのです。

 株式の発行で得られた資金は運転資金や設備資金となるべきです。ですから、現実のお金が伴わない帳簿だけの株式持合いは危険といえます。これは商法においても規制対象となりますので、実際には2社だけで持合うことはあまり行われません。では3社ではどうでしょう?これも商法で規制されています。では何十社という規模で輪を作り、自分の右側の会社の株式を引き受ける形での持合いはどうでしょう?これは現実的にも可能ですし、簡単には調べられません。もう少し応用しますと、マトリクスを組んで持合う方法があります。財閥系企業に多いのですが、何十の会社でグループを組み、株式を小さく分割して持合えば規制対象にはなりませんし、グループで過半数の株式が持合えるのです。

 そもそも株式会社が他社の株式を持たなければこうした問題は起こりません。保険業といった相互会社や信託銀行などは例外としても、一定の事業を行う株式会社が持合いを行っては既存株主の権利を大きく毀損してしまいます。バブル崩壊後は持合いの解消が目立っていたのですが、2012年くらいから再び持合いが増えていると聞きます。一投資家の観点からも決して望ましいとは言えません。

<サイト管理人> 2018年 7月9日記述



 【日本企業の製品やサービスに疑問を持たざるを得ない理由】第493回

   昨日、日産自動車が排気ガスデータの意図的操作(データ改ざん)を公表しました。上層部はこの事実を数か月前から認知していたようですが、公表は株主総会後となりました。私自身、モノを造ることにはプライドがありますし、決められた条件を満たすために時間や労力を十分に割きます。残念ながら大手企業は品質のデータ操作や捏造に関し何の抵抗も無いように感じられてなりません。今回のブログではこうした一連の不適切な行為を時系列で示しますが、なぜ取り決めを破ってしまうのかについても少し考えたいと思います。

<2015年10月23日 旭化成建材 データ捏造>
 横浜市で大型マンションが傾き、基礎の杭打ち工事で虚偽データが使われていたことが分かった。工事を担当した旭化成建材は過去に手掛けた杭打ち工事を調査する方針を示した。総数は45都道府県の3040件に及んだ。

<2016年4月20日 三菱自動車 データ改ざん>
 自社製の軽自動車の燃費を実際よりも良く見せる試験データの不正操作があったと発表した。対象は日本国内で販売された4車種60万台以上に及ぶという。同社によると、タイヤの抵抗などの数値を意図的に操作していたという。対象車両には自社製品として販売した15万7000台のほか、日産自動車に供給している46万8000台が含まれる。

<2017年2月8日 東洋ゴム工業 データ偽装>
 免震ゴムにおける性能評価で不正を行ったほか、その後防振ゴム製品でも不正があった東洋ゴムで、新たにゴム製のシール材の抜き取り検査において不正があったことが明らかになった。

<2017年10月8日 神戸製鋼所 データ改ざん>
 自動車や航空機などに使われているアルミや銅の製品の一部について、強度などを示す検査証明書のデータを書換え、顧客と契約した製品仕様に適合しているように見せかけ出荷していた不正が判明したと発表した。同月13日の会見で新たに中国なども含む9つの子会社でデータのねつ造などを行っていたと明らかにした。鉄やステンレスなどの製品で、これまでの納入先は500社に上るという。

<2017年10月2日 日産自動車 無資格検査>
 横浜市にある本社で緊急会見を開き、車両の完成検査ができる資格が与えられる前の従業員が車両の完成検査に携わっていたと発表した。121万台のリコールを国土交通省に届け出ることを明らかにした。問題発覚後も無資格検査を続けるなどの問題も浮き彫りに。

<2017年10月27日 SUBARU 無資格検査>
 無資格の従業員が車両の完成検査に携わっていたと発表した。国への届け出と異なる状態での検査態勢は30年以上続いてきたという。無資格検査の発覚は日産自動車に続いて2社目で、対象車両のリコールを検討している。

<2017年11月23日 三菱マテリアル データ不正>
 同社連結子会社の三菱電線工業および三菱伸銅において、過去に製造販売した製品の一部について、検査記録データの書き換え等が行われていた。素材産業が強いと言われる日本製製品の品質面への信頼が大きく揺らいでいる。

<2017年11月28日 東レ データ改ざん>
 検査データの書き換え問題が発覚。書き換え後の数字については測定誤差や品質性能のバラつきなどを踏まえれば「全然問題のない数字だ」とも語り、安全性に問題がないことを強調した。

<2017年12月20日 SUBARU 燃費データ書き換え>
 出荷前の自動車に関する社内の燃費検査でデータの書き換えがなかったか調査を始めると発表した。検査を担当する社員の一部から指摘が出たため。

<2018年4月27日 SUBARU 排ガスデータ改ざん>
 燃費や排ガスの検査データの改ざんの対象となった不正の台数が数百台にも及び、スバルの群馬県太田市の工場などで生産された主力車でもあるスポーツタイプ多目的車(SUV)など幅広い車種で見つかった。残された記録を調べる過程で複数の従業員が関与したことも判明しており、データの改ざんが組織的に行われた。

<2018年5月15日 スルガ銀行 資料改ざん>
 シェアハウス投資の融資で資料改ざんなどの不正が相次いだ問題で、地方銀行のスルガ銀行は多くの行員が不正を認識していた可能性があると発表した。業績拡大のため不動産業者と一体で融資にのめり込んだため、内部統制も機能しなかったとされるが、上層部の関与は現在調査中であり、行政処分に関しても検討中。

<2018年7月9日 日産自動車 データ改ざん>
 出荷前に車の性能をチェックする「完成検査」の中で、数百台から数千台に1台の割合で車を選んで実施する「抜き取り検査」という工程で排気ガスデータ改ざんが行なわれた。測定で期待値を超える結果が出た場合、都合のいい数値に書き換える不正が国内の全工場で行われていた。詳細な対応については現在検討中。


 以上がここ数年の大企業における不正です(談合や、東芝や富士ゼロックス等の不正会計については外しております)。中でも最も悪質な改ざん事件は旭化成建材並びにスルガ銀行、神戸製鋼、三菱マテリアルの子会社の事件です。旭化成建材に関しては人命に直結する問題です。神戸製鋼所や三菱マテリアルの問題は素材を提供するメーカーの不正であり、末端のエンドユーザーの数は何十万、何百万に広がる大きな話です。そもそも求められる仕様と全く異なるものを製造して、書類偽造の元、ユーザーにそのまま納品するという悪質な内容になっています。

 安く製品を納品する為に検査にかかる人件費の削減からデータを改ざんする場合や、製品をより良く見せるために品質データを改ざんするケースも多いのでしょうが、時系列的に見ると、製造業に関しては各々の製品が設計やカタログ基準を満足していないことに気づかされます。造られたモノ自体に問題があるのです。取り決め(製品仕様)を破るのではなく、取り決めを満足する製品が造れないのです。この頃、日本製を売りにする広告が多くなっていますが、それだけ日本製の信頼を口にしなければならない状況に追い込まれたとも言えますし、技術レベルが下がってしまったとも言えます。三菱重工が豪華客船の造船において納入が大幅に遅れた挙句に客船事業から撤退したこと、商船三井に納入した高張力鋼を使った最新鋭のコンテナ船がインド洋沖で船体中央部から破断してしまったこと、傘下の三菱飛行機がジェット機の納入時期を何度も延期していることなどからしても問題は深刻に思います。
 ユーザーが製品に求める技術レベルが高すぎる点やグローバル価格戦争も解りますが、一方で基礎的な技術をないがしろにした結果、製品の根幹となる部分の製造技術が追いつかない現実にも目を向けるべきでしょう。

<サイト管理人> 2018年 7月10日記述
参考:NEVERまとめ「2017年 大企業 不正・不祥事まとめ一覧」



 【債権投資と株式投資の違いと、メリット・デメリット】第494回

   債権と株式の違いを明確に答えられる人は意外に少ないのかもしれません。一般的に債権というと日本国債やアメリカ国債をイメージされる方が多いでしょうし、株式は上場企業の発行するものと考えることでしょう。
 しかし、両者の違いは簡単そうに見えてグレーな部分が往々にあるのです。理由としては債券や株式には多くの種類が存在しているからです。言い換えると、株式に近い債券が存在していたり、債券に近い株式もあるのです。そのせいで境界が曖昧になっているとも言えます。一般的な債券や株式を考えると、

 ○ 債券は一定期間後のキャッシュフローが確定している
 ○ 株式は一定期間後のキャッシュフローが確定されない
 ○ 債券は有期限
 ○ 株式は無期限...といった具合です。

 債券投資では利息の支払や元本の償還時期と額があらかじめ決められています。一方株式投資の場合はそうした契約はありません。株式の場合は期末配当の支払いがあったり、会社の清算時には残った財産(残余財産)の分配があります。しかし、その時期や額はあらかじめ定められているわけではありません。さらに、株式保有企業の業績や首脳陣の経営方針によって株主が得られる分配額も大きく変化します。業績不振で無配などということはざらにあるのです。
 そうは言いますが、株式の例外もあります。優先株といわれるものです。これは配当や余った財産を分配する場合、普通株に優先して行なわれるのです。利益の配当に関わる優先株では利益ある限り一定の優先的な配当が受取れます。また、償還型の優先株ともなると、償還期限の到来で元本の現金での償還も可能になるのです。最近ではトヨタの優先株が記憶に新しいところです。

 これまでの重複になる部分がありますが、債券は発行日から何年後といった具合に償還の期限が決められ、償還の期限が到来したら元本が返済されて債券は無くなります。これに対し、株式の場合は償還の期限がありません。会社の解散時には株主へ残った財産の分配から株式は消滅するのですが、会社は未来永劫存続することが前提となっているので、解散時期の定めは行なわれません。しかし、例外の債券や株式も存在します。永久債と言われるものや償還株です。永久債は元本の償還が未来に渡って無く、利息のみ支払われ続けるのです。これに対し償還株では償還期限が来ると現金で元本が償還されるのです。

<サイト管理人> 2018年 7月11日記述



 【憲法改正問題と国民主権の観点からの護憲的改憲について】第495回

   憲法は六法の内のひとつに数えられますが、民法や商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法とは違い、最高法規になります。憲法以上の法規として思いつくのは日米地位協定ですが、こちらは日本が先の戦争で敗北した結果存在していますし、実際に植民化されていることからブログでは触れません。日本に住む日本人に絞ると、憲法は政府から国民の権利を守る為の法律となります。端的な話、行政の暴走を食い止める為に存在しているのです。しかし、国民の大半は憲法の前文を読む機会が無いように思います。義務教育下でしっかりと明示すべきですし、中学生のうちから議論を深めるべきと思います。

 さて、このところ憲法9条の改正について話題に上がりますが、9条の改正は憲法全体の整合性の観点から難しいのではないでしょうか。9条が単体で存在しているのではありませんし、第11条、第25条に相反するものとなるでしょう。なお、国民からして重要な条文は日本国憲法の第3章に盛り込まれており、国民の権利・人権・義務について規定されています。ちなみに、第3章は「第10条から第40条まで」の全31条からなります。以下に権利面で大切な条文を示します。

●第11条(基本的人権)「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」

●第12条(自由及び権利)「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」

●第13条(個人の尊重・幸福追求権)「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」

●第19条(思想・良心の自由)「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」

●第21条(表現の自由)「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」

●第25条(生存権)「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」

●第29条(財産権)「財産権は、これを侵してはならない。」

 憲法は国民の主権を保障するものであり、これを改正する権利も国民サイドにあります。国民投票によって決めるのです。 政府を縛る最高法規の改正を公言する首相までおりますが、行政サイドのトップが自らの自由のために改正を求めるのは理解に苦しみます。なお、中学で習うとおり、憲法の改正は国会だけでは決められず、衆参3分の2以上の賛成で「発議」ができ、国民投票で過半数を得ることで改憲となります。法律を体系的に理解できない首相は、憲法の改正の手続きを緩和する為に96条の改正までを口にしました。96条の緩和を主張する改憲勢力が「憲法を国民の手に取り戻す」などと言っているのです。「政府が憲法を手にする」が事実でしょう。首相以下その仲間は憲法以前に民主主義を理解していないのでしょう。

 なお、憲法改正の動きを見せれば自民党を含む保守を自認する政党は大きなリスクを背負います。衆参3分の2以上の賛成で発議しても国民投票で否決された場合は議会が民意に背いたこととなるので、賛成議員や所属する政党は信任を失います。この場合衆院の解散は避けられませんし、改憲を推した候補者にはこれまでのように票が入らないでしょう。そうした理由からか、改憲を唱える議員は世襲議員や選挙に強い議員に限られています。

 保守を自称している人々は多くおり「アメリカから押し付けられた憲法だから改憲が望ましい」と言う一方で、軍事的にも経済的にもアメリカ支持を訴えています。アメリカ一辺倒という言い方が最も適しており、自己矛盾に気づいていないのです。改憲で大切なことは憲法の中身をしっかりと理解して整合性を損なわないように国民の権利を守ることであり、国民の権利の拡大や昨今のIT化も含めた状況の変化に対応したリニューアル的なものが望ましいと思います。強いて言うなら護憲的改憲が良いのではないでしょうか。

<サイト管理人> 2018年 7月12日記述



 【長期金利の上昇リスクから、個人は債券投資も視野に入れるべき】第496回

   簡単な話から入りますが、債券というのは国や地方の公共団体、会社等が資金を調達する為に作られる期限付きの借用書です。個人間でお金の貸し借りをする場合も借りた人が借用書(借用証書)にサインをし、貸した人がそれを保管しながら利息を受け取るのでイメージがわきやすいと思います。そして、国や地方公共団体及び企業が不特定多数の投資家からお金を借りるときに発行する借用書が債券で、国が借り入れをする場合に発行する債券を「国債」、企業がお金を借りるときに発行する債券を「社債」と呼んでいます。1万円をひとつの単位として買える「個人向け国債」や5万円を単位とした国債、10,50,100万円で買える社債などがあります。
 なお、債券には償還期限が定められています。発行に際しては何年後に返済するのかを定めるのです。そして、期限を迎えることを満期といいます。満期までの期間は毎年利息が支払われますが、債務者である国や地方公共団体、企業が破産するような場合、債権が満期を迎えても額面通り返済される保証はありません。現実に北海道の夕張市は財政破綻しました。学生の就職したいランキングでかつては1位だった日本航空も破綻しました。日本航空では償還日を迎えても額面の13%しか返ってこなかったのです。

 各債権が投資対象として適当かどうかについては、債券の発行元の業績や資力に関わってきます。そういう意味では、日本国が発行する「国債」は日本国政府が破たんしない限り安全となりますので、10年物の国債の利回りは年率で0.1%に満たない状態となっています。これに対して一般企業の場合、その財務状況や経営状況が大きく影響します。財務状態が思わしくない会社の社債は買い手を付ける為に利回りが高く設定され、優良とされる企業の社債利回りは低く設定されます。なお、償還前の社債の取引も行なわれますが、この場合は時価になります。
 現時点で超がつく優良企業の個人向けの社債(5年程度)を償還日まで保有する場合は元本割れを気にする必要もないのでしょうが、途中で売却する際には、価格変動リスクに注意が必要です。債券の価格は長期金利が上昇すると下がり、長期金利が下落すると上がる関係にあります。そして債券の値段は毎日変動しています。さらに流動性リスクもついて回ります。対象となる債券の取引量が小さい場合、自分の保有する債券に買い手がつかず、希望日に売却できないこともあります。売り急げば希望価格よりも大幅にディスカウントした価格でしか約定しない可能性があります。高い利回りを期待してマイナーな社債を買うと後々自由が効かないリスクがあるので注意が必要です。

 2012年に破綻したエルピーダメモリでは合計1385億円の社債が債務不履行(デフォルト)に陥りました。この社債を購入していた知り合いがおりますが、額面の10%程度しか償還されなかったと記憶しております。エルピーダメモリは「日の丸半導体企業」ともてはやされ国税も投入されて救済が試みられておりましたから、多くの個人債権投資家は安心して購入していたフシがあります。ちなみに、社債が安全かどうかはこの分析を専門に行っている機関の「格付け」を参考にするのが一般です。しかし、格付け機関そのものがいい加減で、競輪場などにいる予想屋と変わりませんので、どこまで信用できるかは不明です。エルピーダメモリの社債に関しても多くの格付け機関が倒産直前までBBBを貼っていたのです。破綻報道があるまでジャンク債指定はされませんでした。BBBで国の救済となれば手を出す人がいても不思議はありません。

 なお、もう一度基本にかえりますが、上場されている株式というものは取引所で売買がされます。そして、出した売買注文は同じ市場で取引きしている人間との約定になります。よって、証券会社は自分自身が売買の相手とはならず、注文をマーケットに流すだけのブローカーで、約定して始めて売買手数料が得られるわけです。
 これに対し、債権のような相対の取引では買い希望の人と売り希望の人が直接売買する形をとります。不動産売買に似ているといったらよいでしょうか。とはいえ、大概の場合は投資銀行や証券会社などの金融機関が売買の相手先となります。逆に言えば、ある特定の債券を買いたい場合でも、銀行や証券会社が保有して売りに出していなければ買うことが出来ないのです。売りを出すケースも同様で、取引相手となる投資銀行や証券会社に買い取らせる必要があります。ただ、ここには例外も存在し、以前のブログで書いたCB(転換社債)などは株式と同様に証券取引所で売買ができます。

 今回のブログで債券投資に触れたのは、今後日銀の金融緩和政策が転換され、長期金利が上昇するような局面になった場合の投資先を考える為です。先述の通り、債券の価格は長期金利が上昇すると下がり、長期金利が下落すると上がる関係にあります。現在は日本国債を始め、各種債権が高値をつけており、利回りも小さくなっております。しかし、金融緩和の縮小から「債券価格の下落+利回りの上昇」も想定される為、その日を迎えたらばいつでも各種債権を購入できる状況を作っておく必要があると思います。毎日とは言いませんが、月に1,2度は優良とされる企業の社債相場を見るのが良いのではないでしょうか。

<サイト管理人> 2018年 7月13日記述



 【利息制限法と出資法の狭間で揺れた消費者金融業者と借方】第497回

   20年前、まだ私が学生だった頃、就職先として人気のあった業種にノンバンクがあります。言い換えると消費者金融(貸金業)です。テレビを見ていると深夜の時間帯のCMは大抵貸金業者で、内容もコミカルなものばかりでした。アイフルはチワワ犬と「お自動さん」、アコムは小野真弓の「無人くん」、プロミスはマイケル富岡の「いらっしゃいマシーン」、武富士は武富士ダンサーズが出演し、CMを見ただけでは貸金が目的とは思えないものばかりでした。間口の広さや馴染みやすさから安易な借入れを行い返済に困った友人もおりましたが、テレビ局側も大スポンサーを批判する報道は行いませんでした。当時の業界大手を挙げますと、アイフル(みずほ銀行系)、プロミス(三井住友銀行系)、アコム(三菱UFJFG系)、レイク(新生銀行系)、武富士(破綻)、栄光(破綻)、クレディア(破綻)、三和ファイナンス(破綻)、三洋信販(解散)、日立信販(破綻)、ディック(債権回収事業のみ継続)、本田ちよ(破綻)、丸和商事(事業譲渡)...といった具合ですが、都市銀行系列のノンバンク以外はおおよそ潰れてしまいました。静岡県民にとっては本社が同県で東証一部上場だったクレディアの破綻はヤオハンと同様に記憶に新しいところです。

 これらの会社はなぜ潰れたのでしょう?理由は皆様もご存知の通り、利息制限法の改正並びに罰則の強化です(クレディアは法改正の前に破綻)。平成22年6月8日に改正利息制限法が施行されましたが、それまでは金利の上限を出資法で考えており、利息制限法は守っておりませんでした。行政処分といった罰則規定がないからです。当事者たちは利息制限法をザル法として捉えていました。こうしたことから大抵の消費者金融は利息を20%~29.2%の間で設定していました。29.2%止まりというのは出資法の上限に定められているからであり、出資法に違反をすると罰金や懲役刑が科せられるからです。しかし、利息制限法が改正されると、

 元金10万円未満……上限金利20.0%まで
 元金10万円以上100万円未満……上限金利18.0%まで
 元金100万円以上……上限金利15.0%まで

 上限金利が最高でも20.0%に固定され、この金利を超える設定で貸付を行なった場合、民事上無効になるばかりか、消費者金融業者は行政処分の対象となり、営業停止などの重い処分を受けるようになりました。また、上限金利を越える部分に関しては債務者が過払い金として返還請求を行うこともできます。なお、上限金利が20.0%となった背景には、平成22年6月に出資法の上限金利が引き下げられたことが挙げられます(年29.2%→年20.0%)。また、それまでは29.2%までであったことから、グレーゾーン金利が発生し、過払い金問題が生じたのです。改正法の施行前に契約した分に関しても新金利が適用されたことには少々疑問がありますが、ザル法を守らなかった消費者金融が法律の合間で儲け過ぎたのは事実です。

 消費者金融業者はこのようにして追い詰められ、独立系はほぼ破綻してしまったのですが、誰が得をしたのでしょう?お金を借りていた人はどこへ流れたのでしょう?答えは出ています。第一に過払い金請求の代行として弁護士や司法書士が大きな手数料収入を得ました。悪いことではありませんが、改正利息制限法の施行後、彼らのCMが消費者金融のそれと取って代わりました。現在は以前より減りましたが、バナー報告やテレビCMでもまだ過払い金請求が流れています。第二には銀行がカードローン業事業を伸長させ利息収入を大幅に伸ばしたことです。銀行は銀行法の下にあるため消費者金融業者のように融資額を年収の3分の1以下に抑える総量規制が適用されません。ですから、融資を申し込む人間の所得に関わらず貸したいだけ貸すことが可能になります。スルガ銀行はこの分野の先駆者として持て囃されていましたが、カードローンの金利は3.9%~14.9%で貸出し上限は800万円となっています。総量規制を考えれば年収2400万円相当の人物を相手にしているのと同じなのです。さらにカードローンの審査をスムーズに行なう為に「ニコニコクレジット」ブランドの丸和商事を安値で買収して、ダイレクトワンという消費者金融業者を傘下に立てました。カードローンの審査はどの銀行も基本的に消費者金融が行っておりますが、都市銀行以外で自前にて審査を行なうスルガ銀行はかなりの強みを有しているのです。
 ちなみに、企業向けの融資は総量規制の対象外で、個人事業主も決算書や事業計画を提出すれば総量規制の例外扱いになるようですが、事業者向けの融資から距離を置く貸金業者が多いのは事実です。

 債務者保護の観点に立った場合、平成22年の法改正はどれほどの意義があったのでしょうか。上限金利が大幅に引き下げられたことは借方のメリットですが、総量規制で借入れが出来なくなった人も多くいることでしょう。また、貸したいにも関わらず貸すことが出来ない消費者金融業者も多くいることでしょう。現在も過払い金の支払いで苦しんでいる消費者金融業者もおられることでしょう。
 結果としてユーザーは銀行のカードローンに流れ、負債の総額は変わっていないと思います。このところ目立つのはクレジットカードのショッピング枠を利用する手法で、事実上の借り入れになっているのですが、その方法としてはカードで新幹線の回数券を買ってネット上で売り現金化するものや、ブランドバッグや人気のある芸能人のライブチケットなどを買っては売る(現金を手にする)ものです。どうにも違和感を覚える法改正です。

<サイト管理人> 2018年 7月14日記述



 【昨今の水害報道と水災は行政の失策に伴う人災であることについて】第498回

   諫早豪雨をご存知でしょうか? 1957年7月25日から7月28日にかけて長崎県の諫早市を中心とした地域に発生した集中豪雨と災害を指しています。南高来郡瑞穂村西郷(現・雲仙市)では24時間の降水量が1109mm(トータルでは1500mm程度)という驚異的な降水量を記録し、6時間降水量と12時間降水量では観測史上最高を記録しています。
 このところ岡山県倉敷市の被災が報道されていますが、岡山県の総雨量は600mm程度だったことから記録的とも歴史的とも言えません。各種報道は西日本を中心に「死者が200人以上となる観測史上最大の豪雨」と囃し立てますが、それほどの豪雨ではありませんし、観測点が新たに設置されてからの最大の雨というだけのことです。被災された方のご不孝・不自由・無念は察して余りありますが、今回の雨は異常気象でも何でもないのです。
 素人ながらに申し上げますと、このところの雨は日本海流の蛇行が大きな要因と思われます。2018年に関して5月~6月を観ると関東地方では気温の高い日が多くありましたが、海を挟んだ向こう側のアメリカ西海岸では低温だったのです。フィリピンの沖から高水温の海流が日本海流に乗って北上し、そこから更に北に行って冷たくなった海流がアメリカの西海岸に流れ込んでいると考えられます。

 そもそもなぜ水害が起こったのでしょう。行政が住んではいけない地域を都市計画区域に指定し、住居の建築を認めたこと。水害は十分想定できる範囲内であったのに、堤防を整備すること、河川の底掘りを怠ったことが理由として挙げられ、どれも人災に値します。倉敷市に関して言えばハザードマップ通りに浸水が起こっているのです。だからこそ事前から水没や土砂崩れの危険性を周知徹底する必要があったと思いますし、できる対策をとっておくべきだったのです。諫早豪雨の教訓があるのですから、自治体は時間的な余裕もありましたし、しっかりと予算を割いて災害に備えることもできました。こうした点から残念でならない人災なのです。

 この10年ほどを観ていると、地震や噴火が活性化している時期と思いますが、歴史的な気象災害は無かったでしょう。過去は伊勢湾台風など大型の台風が多く日本に上陸しました。特に伊勢湾台風では各地に大きな災害をもたらし、多くの河川が氾濫するばかりでなく、他の地域よりも低いあちこちの土地が水没したのです。にも関わらず、当時水没した地域には平然と住宅が建てられています。理由は簡単です。実質所得が低下して駅近物件を買うことができず、郊外かつ災害の危険のある土地を買わざるを得ないからです。行政はこうした土地に規制をかけると共に、治水工事の他、代替え地を安価で提供するくらいのことを行って欲しいものです。

 更に、森林の管理の問題もあります。山で生きている木が無料状態(ヒノキでも切ってくれるなら差し上げますという状態)であることから、森林の手入れが行われず、根の浅い若い針葉樹林が増加しています。そして、これらは大雨に弱く、結果として土砂崩れ(表層崩壊)を招くのです。今回の豪雨で報道されているように、流された木や土砂が住宅を押し潰すことになります。また、流れ来た木が橋げたに引っかかり洪水も引き起こします。防災の観点からも樹木の間引きを積極的に行わなければなりません。

 行政は税金として集めた大量のおカネを公共事業に投下します。それ自体は富の再分配ですから悪いことではありませんし、新しい道路も必要です。和歌山県から三重県に繋がる予定の二階バイパス(通称)は経済的にも社会的にも防災的にも大きな効果があると思います。静岡県から山梨県へ繋がるバイパスも大切でしょう。しかし、それよりも大切な問題は現在あるものの保守管理並びにアップグレードです。色々なインフラが老朽化しています。河川の堤防改修工事もそうですが、上下水道、国道・県道・市道、挙げれば対象はいくらでもあります。今回の水害を教訓に、行政は予算の配分を考えてバランスよく災害への備えを行って欲しいと思います。

<サイト管理人> 2018年 7月15日記述



 【外国人のモノを見る目の確かさから日本人は多くを学ぶべき】第499回

   2014年~2015年頃は中国人の爆買い報道が連日にように報道されていました。観光バスや航空機に大量に家電製品を積込む姿を目にした人は驚かれたと思います。この買い物は、中国人の多くが裕福になっていることを裏付けたばかりでなく、日本で仕入れた家電製品を中国国内で転売すると相応のマージンが得られたことを示しています。その後、2016年の上期に関税率が上げられると同時に爆買いも収束しました。一連の流れを観ると実に合理的な行動であると思います。名より実を取る外国人といいますか、利益が得られる隙間には必ず入り込むのが外国人と感心させられます。
 日本人の多くは中国人を下に見ていますが、中国人富裕層の観光先は日本から欧州に移っています。そして、そこの免税店で高級腕時計やバッグ、財布などを買っています。転売目的というより自分や家族の為のもののようです。日本に来る中国人の購買対象はダイソーやドラッグストアに並ぶ商品のようで、以前のような比較的高額な家電製品には目もくれません。国内で同じものが安く手に入るからです。100円ショップやドラッグストアに観光バスで乗り入れて買い物をする理由は転売だけでなく、商品に金額以上の価値を見出しているからです。私たちは彼らが買うものを参考にすべきです。スーパーマーケットのおとりチラシに踊らされるくらいなら、彼らの買い物を常にウォッチすることで、買うべきものやタイミングが測れると思うのです。
 また、日本に居住権を得ているブラジル人やペルー人が多くいる店も金額以上の価値ある商品が並んでいるケースが見られます。南米の人はリサイクルショップに見受けられますが、100円ショップで売っているものと同等の陶磁器を50円以下で買っていきます。衣類についても同様で、しまむらと同レベルの品物を200円以下で買うのです。日本人は肌に触れる中古品を嫌いますが、彼らはそのようなことを気にしません。合理的に考えているのです。

 あまり報道されませんが、北海道の一部地域の土地に数千万円から億の値段がついています。地価上昇率ナンバーワンは都心でも福岡でもありません。北海道のリゾート地である倶知安町やニセコ町の土地・建物なのです。蝦夷富士を望み、冬はパウダースノー、夏は避暑地となるこの場所はオーストラリア人を中心に人気が高く、ここ数年を見ると冬季は世界中の人が訪れる街となりました。日本語が通じにくいレストランや日本人にパスポートの提示を求める店舗が目立ちます。夏場こそ日本人の割合が大きいようですが、冬場は町民よりもはるかに多い外国人で埋め尽くされます。余談ですが、レストランでは一杯2500円のカニラーメンが人気のようで「日本は物価が安い」と言われています。為替レートもそうですが、随分貧しい国になってしまったと考えさせられます。
 10年前までは北海道のニセコ町など消滅自治体にカウントされていたのです。しかし、恵まれた地形、地理、気候、物価、リゾート施設(スキー場)を勘案した外国人が資本を投下することで札幌を越える裕福な街になりつつあります。そこに住んでいた日本人は地価の大幅な上昇で大きな資産を手にすることが出来たのです。住民トラブルといった治安面については解りませんのでここでは記載しません。

 同じリゾート地でも、千葉の館山、静岡の熱海・伊東、山梨の富士五湖周辺、長野の蓼科、愛知の知多、新潟の越後湯沢はひどい有様です。特に湯沢のマンションは買い手がつかず、ほぼ無料で手に入ります。もちろん無料には理由があり、生活が不自由なばかりでなく、マンション自体の修繕積立金や管理費が高額になっているのです。持っていることが負債の種になってくるのです。建設当時は億の値段がついたマンションですが、投資対象となる地理的・気候的条件が揃わないとただのゴミと化します。東海地区に住んでいる私などからすると、愛知県知多郡南知多町のチッタ・ナポリのナポリタワーなどは今でも憧れを持つ物件ですが、33階/34階中,3LDK,約100㎡で2000万円程です。完成同時は東海地区で一番の高さを誇った建築物で、こちらも億で取引されていたのです。3方に海が広がり、海水浴場やマリーナなどの施設も充実していますが、最寄りの河和駅から遠すぎることや生活の不便さ(最寄りのコメリやココカラファイン、YANAGIまで2km程度離れていること)から、海外勢の買いも入りません。現物を見てきましたが、1994年の建築から24年が経過し、海風にさらされた結果、全体的に傷みも酷くなっています。棟内のレストランの営業時間も限られており、管理者のサービスも良いとは言えません。このまま越後湯沢化するのか、名鉄河和線が延長することで名古屋への通勤圏化からマンション価格が上向くのかもしれません。リゾート地に住みながら勤務可能ともなれば賃貸も踏まえて収益性が高くなる可能性もゼロではないと思います。

 以上から、人種を問わず、外国人がいない小売店やリゾート地には魅力が無く、そこでのサービスや売られているものは高いと言えるでしょう。日本人の多くは過去の価格と比較してしまうことから「随分と安くなった」等と考えがちですが、それは中身を見ていない証拠です。だからこそ土地にせよ建物にせよ、日用品にせよ、株式にせよゴルフ会員権にせよ、無理な値段で買ってしまうのです。値段以上のパフォーマンスを有するものには相対的に裕福となった外国人の影が必ずついて回ります。

<サイト管理人> 2018年 7月16日記述



 【MonotaROの成長の裏にある品揃えの豊富さと今後の課題】第500回

   MonotaRO(モノタロウ)と聞いて工場や工事用間接資材のネット通販会社と答える人はユーザーくらいでしょう。私は会社で購買も担当していることもあり、10年ほど前から商品展開や価格の推移を見ることができました。現在までに建設,配管,造園,化学,鋼構造物,大工,自動車板金,自動車整備,土木,電気,道路工事,運送業に関わるプロが使う道具や消耗品を取り扱っております。事務用品に関しても力を入れており、一部ではアスクルよりも低価格で品質の良い商品を提供してくれます。さらに、愛らしいキャラクターを設定し、リズミカルなテレビコマーシャルを流していることから、子供がCMソングを口ずさむこともあり、社名そのものの認知度は高いと思われます。

 MonotaROは2000年に住友商事と米国グレンジャー社の共同出資により設立されました。現在は同分野の米国大手が親会社となっており、中小零細企業が主な顧客です。2018年3月には取扱い点数が1,500万アイテムに増加し、登録ユーザー数も280万件超えました。売り上げも毎年100億円以上伸ばし、EPSも同様に伸ばしています。商品カタログも業種別に分かれており、無料で送付されます。全てのカタログを並べると80cm幅程になり、品揃えの充実を実感させられます。
 私が工事用間接資材等の購買に関わるようになったのは2008年頃でしたが、当時はいくつもの会社が乱立しており、大半は低価格かつ低品質の自社商品をラインナップしておりました。ユーザー側としては商品の選定には随分と頭を痛めましたし、購入した商品が使い物にならないケースもままありました。しかし、時間の経過とともに業者が淘汰されていき、低価格を維持しながら自社製品の高品質化、一流メーカー品の取扱い点数の増加を実行していったMonotaROが工事用間接資材のネット販売でトップの地位を築いたのです。

 こうして書くと将来バラ色にも思える同社ですが、利益率は横ばいとなっており、品物の配送業者の単価上昇や取扱い点数の急激な増加から商品管理に無理が生じているようにも思われます。ユーザーとしてこの異変を感じるのは、当日15時までの注文の場合、当日出荷+翌日配達が基本でしたが、現在はそれが適わなくなっていることや、10点ほどの商品を頼んでも佐川急便、ヤマト運輸、ゆうパックといった具合に配送業者が分散して納品されることがよく見られるようになったことです。また、低価格かつ高品質を武器に展開してきた自社ブランド製品の一部値上げも起こっております。価格以上の価値がある人気商品を価格並みに設定しているのです。とりあえずは地元の商社やDIYショップから仕入れるよりも安価な商品が多くあり、アイテムの豊富さ並びに納期の短さから、今のところ優位に変わりはありません。

 2018年7月13日時点の株価が5,360円(BPSは191.59でBPRが27.98、PERが66.26、配当利回りが0.49)ですから、これに関しては随分割高と思われます。先述の通り売上げも純利益も財務体質も年々良くなっておりますが、実態を超えた株価といえるでしょう。ただ、資産が数百億円規模の会社ですから、今後の株価の上下は予測がつきません。割高だから下がるとは言い切れないわけです。

 今後の課題としては価格を維持しながら商品点数を増やし、以前のような納期の短縮を実現すること。保証が数年付くような電気製品のアフターサービスを充実させること。スナッポンやバーコの工具といった高級ブランド商品の取扱い(メーカー直送品)を行なうことと思います。アスクルも各種工具等の取り扱いを始めておりますが、競合他社にシェアを奪われない・奪う為には、これからも取扱商品の分野を広げる必要があるでしょう。地域毎に卸売り業者があり、中小零細企業がそこに依存している現状において、また、国内の需要が限られていく中でどれだけの分野を寡占できるかが同社にとって成長の鍵となるでしょう。

<サイト管理人> 2018年 7月17日記述



 【ガソリン価格の高止まり要因は円安?原油価格の上昇?】第501回

   経済産業省資源エネルギー庁が7月11日に発表した7月9日時点のレギュラーガソリンの全国平均小売価格は152円でした。5週ぶりの上昇ですが、高止まっている状況です。報道では「円が安い方向に振れていることや原油価格の値上がりが影響している」と解説しているのではないでしょうか。私は地上波を見ませんので良く解りませんが、ガソリン価格の高止まりの説明としては不十分です。

A.ガソリン税の影響
 ガソリン税とは、正式には「揮発油税及び地方揮発油税」と言います。 現在1リットル当たり53.8円の税金が課されています。また、1リットル当たり石油税が2.54円かけられています。そして、これらの税金とガソリン本体価格の合計に消費税がのってきます。二重課税ではないかという議論はいつでも起こります。
 なお、レギュラーガソリンを150円/ℓとすると、ガソリンの本体価格は82.29円で税金は67.71円となり、支払い額の45%以上を税金が占めている勘定になります。消費税が3%増税(8%課税)されたことで、それまでよりも4.5円程度高くなっている現実があります。

B.石油精製能力の削減に伴う供給調整
 マスコミが報道しない事実として、国内石油メジャーは石油製品需要の減少から原油精製能力の大規模な削減を行なっております。石油製品には自動車向けのガソリンや軽油、発電所や工場、大型船の燃料として使用される重油、プラスチックなどの原料となるナフサなどがあり、幅広く使用されていますが、エコカーの普及などに伴う燃費向上や、環境負荷の少ない天然ガスへの燃料転換などを背景に、その需要は1999年をピークに減少に転じています。とくに、08 年以降は金融危機に伴う景気低迷により需要は大きく落ち込んでおります。直近では、東日本大震災により火力発電向けの重油が需要増により増加しましたが、石油製品の全体の需要は総じて低迷が続いています。1999年の80%程度の水準になっているようです。原油というのは人間の都合が良いように作られてはおらず、重油だけ多く精製することはできません。重油に比例してガソリンが精製されますし、ナフサもできます。

 そもそも石油元売り業界は固定費負担の大きい業種であり、稼働率の低下が収益悪化に直接繋がってきます。この為、元売り各社は、需要の落ち込みに対して、99 年度から主に小規模な製油所を閉鎖しています。ピーク時から一日あたり約60万バーレルの精製能力を削減しました。結果、稼働率は収益確保の目安となる8割超のレベルを保ってきましたが、現在の稼働率はそれを切る水準で推移しています。

 先日、石油元売り大手の出光興産と昭和シェル石油が合併による2019年3月の経営統合で合意しました。JX日鉱日石エネルギーを傘下に持つJXホールディングスと東燃ゼネラル石油も統合し、JXTGとなっています。業界一位がJXTG、二位が出光・昭和シェル、三位がコスモエネルギーホールディングスという構図となりましたが、業界の再編が加速している裏にはガソリンの需要低迷でコスト削減が迫られ、石油以外の事業育成に耐える体力が必要になっている事情があるようです。国内の石油製品市場は縮小の一途をたどっています。先述の通り、人口減やエコカーの普及でガソリン需要は減少しており、製油所の再編も進んでいるのですがまだ十分ではありません。ガソリンなど燃料油の供給能力が販売量を上回っているのです。

 ガソリン価格の高止まりは原油相場の上昇ばかりではなく、そこにかけられる税金と石油元売り大手の非効率な精製能力が原因であり、メジャーの利益相当分が価格に転嫁されているからに他なりません。本来1バーレル/40ドル水準ならばレギュラーガソリンは100円/ℓを切るはずなのです。消費者は国内石油メジャーの都合と税金に翻弄されています。

<サイト管理人> 2018年 7月18日記述



 【投資家目線で見た最高にコスパが良い自動車は何であるのか?】第502回

   結論から入りますが、国産のディーゼルエンジンのSUVです。色もグレードも関係ありませんし、走行距離も気にしなくて良いでしょう。とはいえ、該当する車種はトヨタのランドクルーザー100系と三菱パジェロ(ショートボディは除く)だけです。現行のランドクルーザー200系はディーゼルエンジンのラインナップは無かったと思います。ちなみに、ランドクルーザーの新車乗出し価格は620万円位~、パジェロでは470万円位~となります。
 ディーゼル仕様で10年経過、走行距離10万キロ、修復暦なしという条件ですと、2018年7月現在の業者オークションでは、

○ランドクルーザー100系 評価3.5点 ・・・250万円前後
○パジェロロング 評価3.5点 ・・・140万円前後
※評価点3.5はパッと見て解る小さな傷や凹みがある車です。

で落札されています。しかし、人気車種であるこれらの車は年間を通じてもそれほどの台数は出ません。車買取りセンターからそのまま国内オークションにかけられることなく海外へ行ってしまうからです。

 仮に上記の条件+諸経費で購入したとして、通常使用の4年後に業者オークションにかけたらどうなるでしょうか?これらの車は国内で価格が決まるものではなく、国際的なマーケット価格が適用されますので為替の大幅な変動が無い限り値下がりはほぼ無いといってよいでしょう。もちろん新型モデルの登場や円高によりオークション価格が下落することは考えられますが、新車購入時から10年を経過し、10万キロを超えたような車は発展途上国へと輸出されますし、途上国はこれからも成長を続けていきますから現在よりも高い値段を付けてくれるわけです。車の価値下落率を途上国の成長率が相殺してくれるのです。
 運動性の高い車が良い、運転していて楽しい車が良い、加速力の大きい車が良い、ワンボックスが良い、ワゴンが良い、クーペが良い、セダンが良い、軽自動車が良い、外国車が良い、いろいろな意見があると思いますが、投資家目線のコストパフォーマンスという観点からはランドクルーザーならびにパジェロのディーゼルエンジン車が最も適当な車となります。買った値段と売れる値段で評価するからです。ちなみに、メルセデスベンツのSクラスなどは最悪の車です。1500万円程度で購入しても10年経過すれば100万円の値が付くかどうかですし、故障も頻発し修理代が非常に高額となります。Gクラス350d(メルセデスベンツのSUVディーゼル)を1300万円で買っても10年経過すればオークションでは350万円が良いところでしょう。こちらも故障を伴う維持費が非常に高額になります。

 もちろんランドクルーザーやパジェロも良いことずくめではありません。大きな駐車場が必要になることや立体駐車場等に入庫できないといった問題や、窃盗リスクがあるからです。しかし、後者は車両保険で対応が可能です。外国車のように駆動系・電装系のトラブルを気にしなくても良いことから修理費はさほどかかりませんし、消耗品代も純正品ばかりでなく互換品も豊富にあることから安価になっています。また、燃料も軽油ですから経済的でしょう。さらに、ベースが世界戦略車としてのSUVですから悪路走破性が非常に高く、災害時に活躍するばかりでなく、車内の広さから大人数かつ大量の荷物を載せることが可能です。もちろん搭乗している人間の安全性といった観点からも最高のパフォーマンスを示してくれます。駐車場にとめられない...。10年も経過した中古車を買うのは...。という人は仕方ありませんが、費用対効果でみると世界中を探してもこれほどの車はないでしょう。さらに法人で購入する場合、新車販売価格の半分以下で10年経過した車となりますから、1年か2年で償却することが可能です。節税対策としても魅力のある車と言えます。

<サイト管理人> 2018年 7月24日記述



 【スケールメリットを生かせない日本は隙間産業で生きる?】第503回

   この国に籍を置いている人は私も含めて実につまらない時代を生きています。この30年間で日本企業はおおよそ成長せず、新しい産業を興すことも出来ませんでした。正確には、様々な規制や圧力から新しい産業を潰してきたのです。政治も経団連も世界の変革を見てきませんでした。国内にばかり目をとられて、自分たちのおかれている状況を知ろうとしませんでした。そういう中でソフトバンクや楽天が出てきたことは畏敬の念すら抱きます。
 大手メディアも種子法をはじめ、国民生活を脅かす案件にはほとんど触れません。見えざる力を勝手に想像しているのでしょうか、互いに監視しているのでしょうか。とりあえずこんなところで考える問題ではありません。
 今回は平成30年間の日本企業の現実を見てみます。

    

 左側の順位は平成元年7月の世界企業時価総額ランキングで、右側のそれは平成30年に7月のランキングです。日本企業はトヨタ自動車だけであり、100位までスケールをとってもNTTが入るくらいでしょう。見る限り随分酷い有様です。企業は大きければいいとも言えませんが、スケールメリットによる寡占化から、モノやサービスの価格を一定程度決める権利を有します。しかし、今の日本企業にはそれが無いのです。価格決定権が無い企業は淘汰される以外にありません。もし生き残るとすれば部品専業といった隙間産業でしょうが、資産総額が12桁前半程度の規模にしかなれないと考えられます。これではまともな研究開発費が捻出できません。年間約1兆円のサムスン電子とは比べ物にならないのです。地対空ミサイルでロシアに大きく遅れ、S-500が配備間近のようです。5G通信で中国に完敗し、政府主導の国産中型ジェット機もまともに飛ばず、日本車はコストカットが随所に目立ちます。現行レクサスESはカムリを飾っただけの代物です。それでいて価格は2倍になっています。原価を抑えることと燃費しか考えられないメーカーなのでしょう。これなら同価格帯のメルセデスCやEクラスを買うのが普通です。リチウムイオンバッテリー技術でも中国の企業に大きく差をつけられています。半導体関連も液晶関連も振るいません。今の技術で未来を見てしまうせいもありますが、どうにも暗い将来です。あと10年後にどれだけの輸出系製造メーカーが残っているでしょう?

<サイト管理人> 2018年 7月26日記述



 【毎年出てくるウイルスに対する過剰反応と思考力低下】第504回

   昨今、新しい形のウイルスに関係する報道がしきりです。ロイターなどの海外の情報サイトでは一ヶ月ほど前から連日トップニュースに取り上げられています。それまでは対岸の火事といった感じでしたが、自国にも感染者が確認されて暫く後はこのニュース一色です。日経平均も終値ベースで本日18000円程度になっています。直近高値が24000円?くらいでしたから、年初からほぼほぼ30%程度下落しました。また、日経恐怖指数も50を超えております。とはいえ、今回のケースの裏にあるものは人間の死生観となるので割安感を覚えないのではないでしょうか。普段から自分が死ぬということを受け入れて生きている人と、そうしたことから距離を置いて生きている人との温度差があまりにも大きく、互いに対する不信感や恐怖が今回の騒動の原因となっているからです。各種生活用品の買占めは自分の管理している在庫を把握していない人間の多さの現れであり、計画的かつロジカルに動けない人間の象徴です。まるで芥川の羅生門に描かれたような世界になっています。経営者と従業員の考え方の乖離も大きなものです。このような状況で他国より大規模な財政出動が行なわれ、日本円の価値が著しく毀損されることとなれば歯止めが効かなくなり、この場合の株価高騰に対する資金移動効果などは焼け石に水といった感じでしょうか。

 そもそも今回のウイルスはこれまでにあったものとさほど変わらず、単に治療薬がないというだけのことですから、自分の感染ないし何らかの症状を感じた場合は「安静にして身体を冷やさないようにし、栄養のあるものを食べて対処するだけ」のことです。一部で重症化する人も出るのは解りますが、そういう人は入院をすれば良いわけで、こちらに関しては医療を所管する厚生労働省の責任の範疇で対応してもらうだけのことです。病床が不足するといった懸念もあるようですが、こちらは行政の話であって、必要に予算を確保しなかった失策を表しています。お隣の国では病床ごと建築したのですから、必要になればこの国で出来ないことはないでしょう。
 また、このウイルスに関して専門家と称する人が様々な意見を述べておりますが、厚生労働省の責任者は一度も会見をしておりませんし、一国の首相も何度か会見は開くものの、どう対処するのか具体策を示していません。とても不快に思うのは各分野の責任者を一堂に会させて今後の方針を個人名を出して提案させないことです。普段から民間の営利活動を阻害することしか行なわない彼らでも、こういう時の為に一般会計並びに特殊会計等の税金で養われているのですから、少しは役に立ってもらいたいものです。この点については中央並びに地方自治体の関係する行政職に対しても同じ思いを抱いております。その道のプロと言われる人間ほど責任を取らないのがこの国におけるプロのようで、残念でなりません。
 さらに、この国には民間の仮面を被った自動車メーカーや機械メーカー、重工メーカーが数多く存在しております。補助金をもらわなくては製品を提供出来ない能力の低い会社群です。輸出もどし税をもらい、日本円を安く誘導してもらいやっと成立してきたのです。こういう有様ですから製品は新しいモデルが出るたびに劣化しています。韓国・中国批判がついてまわるこの国にありながらも、そうした国の商品・製品を横並びで比較するとその品質の悪さには驚かされます。

 今回のウイルス騒動は「人間の愚かな行動として発生した恐慌」と歴史の教科書に掲載されるでしょうが、改めてそれぞれの立場における責任であるとか、モノを作るとはどういうことなのか、サービスを提供することとは何なのかを考える機会になれば安い勉強代ではないでしょうか。街づくりといった分野に事業展開を行なうつまらない自動車メーカーや買収によって存続しているような会社には早々にマーケットから退場してもらい、そうした企業に優先して融資してきた金融機関もキッチリと責任を取る、そして行政サイドの人間も責任の所在を明らかにして身を処す。こうしたことに繋がれば災い転じて何とやらではないでしょうか?あまりにも「プロ(専門家)」とされる責任を取らない組織や人間に振り回され過ぎているように感じられます。彼らの無責任が多勢の思考低下に繋がってはいませんか?だからこそ国産でジェット機の型式証明も取れないのでしょう。自己満足の製品や商品は必要最低限の仕様を満足することができないのです。

<サイト管理人> 2020年 4月 1日記述



 【今年急に騒ぎ出した感染症が知らしめる社会の要・不要】第505回

   マスコミ主導の全体主義が蔓延している昨今、個人の権利や自由が随分蔑ろにされております。また、そのこと自体に気づいている人も少ないと思います。さらに、経済的な不協和も拡大しており、業種別に明暗が分かれる状況となりました。また、動画配信サイトへ私生活を切り売りして投稿する芸能人やスポーツ・文化人が目立つこの頃は、第3次産業に関わる多くの人間が食べていけない状況を示しています。ほんの1年前まで持て囃されていたこれらの人たちは完全に勘違いをさせられていたともいえます。有事の際には不必要な業種である娯楽のマネキンとして持て囃され、そこに付加価値がつき、あたかも特別な存在であるかのような雰囲気が作り上げられ、多く人間の興味を引いてパトロン化させる構図がありました。小中学生の小さな資金でもそれが数百万単位で集まれば大きなビジネスになりますし、こうしたことは50年前からありました。ただ、昨今はそれが行き過ぎてしまっていたように思われます。

 40年程前に吉本興業や松竹芸能が芸人養成学校を作り、アニメーションの制作会社がこうした専門学校を作るブームが起こりました。それまでにあった、特定の師匠に弟子入りして芸能活動を始めるという形態から、一見芸能界に就職するかのような形を取るようになります。敷居が低くなったというのか、このころから参入障壁が無くなったとも言えます。こうして多くの人たちが一見華やかそうな世界を目指すようになります。その後、CCガールズなどのガールズブーム、沖縄県出身のタレントブーム、併せて韓流ブームへと続いていきますが、沖縄勢の活躍は凄まじいものだったと記憶しております。

 沖縄県の人たちは現在でも本土、特に首都圏や大都市圏との経済格差が大きい状況にあります。もちろん普通に食べていくことは可能ですが、大抵が考える普通の贅沢ができない所得水準といえるのではないでしょうか。それでもかつての沖縄よりは随分と環境が改善されている事実もあります。25年ほど前に安室奈美恵やMAXという歌手兼ダンサーが出てきました。この背景には沖縄発の産業を興そうというものがありました。事実沖縄アクターズスクールは人気を博しましたし、MAXの後にはSPEEDといったユニット、仲間由紀恵などの女優も続き、沖縄県出身ということがひとつのブランドになったのです。それ以前の偏見に満ちたものとは大きな違いです。貧しいこの地域の人たちが如何にして収入を得るのか、それを見事に具現化させたともいえます。養成学校から芸能事務所・プロモーター、観光、アミューズメント施設と言った具合にすそ野を広げていきましたが、今回の感染症騒ぎにて全てが崩壊しました。本来不必要なモノに付加価値をつけるビジネスモデルは諸刃の剣であったということです。

 10年くらい前までこの国は世界の中で最も裕福な位置にあったと思います。しかし、隣の大国がアメリカとGDPで肩を並べる昨今ではその地位も随分低下しました。他国民はこの国のことをもはや大国とは言わないでしょうし、PCパーツなどを買っても日本語の説明書が添付されていないケースが見られるようになりました。デジタル通信の分野では周回遅れをとり、重工業の分野でも同様にあります。このような現状をもたらした理由は多く思い当たりますが、最も大きなものは、本来不必要なモノやサービスに付加価値をつけようとしたことにあるのでしょう。第1次産業を蔑ろにし、第2次作業に従事する企業群は無策な政府の補助金に群がり、技能実習生という名の奴隷を酷使してきました。さらに、第3次産業という形にもならないそれが肥大化してしまい、産業の構造が歪になりました。また、銀行も銀行法で示す預金の保護を疎かにし、価値も無い金融商品の販売からの手数料商売に執心しております。サブリース契約等に絡む顧客の預金改ざん行為でもその問題を露呈しました。銀行は顧客の保護をまるで考えてはいません。保証会社が入れば自身の損失は無いからです。そもそも金融が本業で稼げないのは経済構造が大きく歪んでいるからであり、この国に住む人間の奢りでもあります。このことにあまりにも無頓着すぎるように感じられます。
 当面は、つまらない第3次産業の末端である芸能人の動向を観ることで、この国にとって本当に必要なモノが何であるのかが見えてくると思います。行過ぎたダイエットや美容に関する商売のマネキンになるケースや、通販チャンネルに使われる芸能人の姿は残念でなりません。芸能人養成学校を運営する大手芸能事務所、まだ500億円程度の成長市場であるYoutubeに相次いで参入する行き場の無い芸能人、私生活を切り売りする芸能人が目立ちますが、これは本来、社会が機能してこそ成り立つ末端産業であることを改めて知らしめています。1月からの感染症騒ぎは色々な意味で多くを学べるいい機会になっているのではないでしょうか。日常溢れる芸能人の姿を地上波やBS、ネットなどを通して観察していくのは意味あることと思われます。

<サイト管理人> 2020年11月30日記述



 【学校教育で必要なカリキュラムについて考える】第506回

   昨今、人が生きるために必要な職業に人材が足りず、優先順位の低いものに人が向かう傾向があります。求人情報サイトや情報誌を見れば明らかです。小売業、サービス業など、本来社会を形成するのに必要ではない業種に人員が多く配置されていることが原因となっております。人間がそれとして生きる為に「必要な仕事」というものは全体の2割にも満たないのではないでしょうか。食べる、寝る、子孫を残す、この基本を満足させるために仕事があるわけで、それ以外のものはそこから溢れる人材に「シゴト」としてあてがわれているに過ぎません。無論そこから上がる税収は社会保障に向けられるため、すべてが無駄とも言い切れませんが、不要な活動の為に行政が予算をつけている現状を考えれば実質マイナスのものばかりでしょう。
 人間にとって最も重要な職業は「食料の調達・生産」を行うものです。つまり第1次産業になります。農業や林業、漁業などが当てはまりますが、近年は北関東や北海道では農業の大規模化が進んでおり、国内でも会社経営的な手法から大量の農産物の生産を行っている事業主が表れております。JAを介さず農産物を流通させられることもプラスに働いております。これに対して、林業や漁業には人が向かわず、漁業従事者の平均年齢は70歳前後になっているのではないでしょうか。肉食へと食文化が変わってしまったことなども起因しておりますが、海洋国家であるこの国で漁業という産業を生かせないことは残念でなりません。豊かな海洋資源を捕獲するだけでなく、高付加価値商品の養殖など、できることはたくさんあります。日本を取り巻く多くの国が経済的にますます豊かになっていく現在、日本から第1次産業の商品をそれらに輸出していく流れは今後加速度的に進むものと思われます。現在干しアワビやフカヒレなどの商品が人気になっていることは既に知られておりますが、あらゆる海産物でこうした現象が起こるものと考えております。
 次に必要となるものは第2次産業です。この発端は第1次産業を支えるための農機具や漁具作りになります。鍬や鋤、鋸、網の生産などから始まり、近年は蒸気機関や内燃機関の発明へとつながり、モノからモノを作るという流れが爆発的に進みました。内燃機関といってもピンとこないでしょうが、漁船やトラクター、トラック、貨物船は皆これに該当します。そしてこの国の生み出すこれらの品質の高さは現在のところ世界中から認められております。
 第3次産業は第1次産業や第2次産業の活動を円滑に行うため、これらに付随して物流や金融業を中心に栄えました。物流については北前船などを連想すればよいでしょう。株式といった証券の取り扱いは1600年頃のネーデルランドから一般的になり、江戸時代にあった各種相場などは世界最先端のものでした。この時代の取引形態は今の相場の教科書になっている程です。ただ、いつしかそれが独り歩きしてしまい、現在は金融機関自体が肥大化し、実体のない金融派生商品が異様なほど出回り、金融機関からこぼれた案件がクラウドファンディングと称した資金集めに走っております。豊田商事のペーパー商法や安愚楽牧場のネット版です。規模は比べるまでもなく小さいのですが、これに関しては令和納豆の例が解りやすいでしょう。世の中には一過性のものが多数を占め、これから先も同様の状況が続き、ますます細分化されていくと考えられます。また、世の中には過剰なまでのサービス業で溢れております。飲食店や美容院、情報端末売り場...挙げればきりがありませんが、本来人間が生きるのに必要な活動とは程遠い不要なもので溢れております。
 とは言え、ここまでは実体のある活動になりますが、近年、この第3次産業にネットワークの中だけで帰結する業態も加わりました。旧来のマスコミ以上に強くトレンドを形成し、世論を誘導し、時代遅れや孤独感を生み出す仕組みと言ったらよいでしょうか。人間から考えることそのものを奪う仕組みとも言えます。評価サイトなどはそのよい例です。特に集団を形成しがちな日本人にはマッチしているのかもしれませんが、この約2年間続いている感染症騒ぎなどにはそれが悪い方向に効果が出てしまいました。自分で統計を取ることもなく、ネット上に溢れる情報をピックアップして世論を形成する一員となる、これではまるで自分というものがありませんし、何を基準に生きているのでしょう。
 話が少々それましたが、今、学校教育で教えるべきことは「世界中で起こっている経済競争から子供たちが生き残るすべ」であり、「食べる、寝る、子供を育てる」という基本に即した世界共通の職業について早いうちから認識させることでしょう。上記のような不要な仕事を作っていられる経済的な時間的余裕はこの国にほぼ残されていないのです。問題は中教審のレベルの低さと現場職員の無能さではなく、私たち自身にあります。このままでは助かるものも助かりません。今が最後のターニングポイントに思えております。若い世代の未来に待っているものは隣の大国への出稼ぎ単純労働とこの国への仕送りです。

<サイト管理人> 2021年10月26日記述



 【徹底的なデジタル嫌いも一歩引いて観てみると...】第507回

   デジタルを受け入れられない人間にはとても生きづらい世の中になりました。誰かがお読みのこのブログもデジタルデータの集合体で、私自身も使ってはおります。かといって依存する気にもなれません。
 このブログで「デジタルとは何か」から始めるときりがないので、今回はアナログ代表のフイルムカメラとデジタル代表のデジタルカメラなどを例にとってブログを書いてみます。

 私自身はフイルムカメラと随分関わってきました。そしてそこから離れて20年ほどが経過し、それ以降、毎年のように購入してきたデジタルカメラはそれぞれ何百枚か撮るだけで飽きることを繰り返しました。理由は簡単で、デジタル独特の輪郭線の出方、特に人工的なシャープさが受け入れられず、フイルムに焼き付けられた柔らかい描写に良さを感じているからです。今フイルムを手に入れて手持ちの機材で撮影し、「現像+プリント」を行えば思った通りの写真が撮れるでしょう。満足がいくだろうと思います。20年前と同じ銘柄のフイルムも販売されておりますから、不可能ではありません。以前、フイルム撮影から現像までを行い、出来たネガやポジをフイルムスキャナーで読み込んだらどうか?というお勧めを頂きましたが、結局デジタル化してしまう時点で意味がなくなるので一度も行わずに今日まで来ております。どれだけ解像度が上がったところでデジタルモノは同じ結果になるからです。

 ただ、どういうわけか、このところデジタル機材一式を担いで撮影をするようになりました。きっかけはスマートフォンのスナップ写真からなのですが、研修で関西方面に行った際、街の様子を撮っていたところ、偶然出くわした夕景が殊の外きれいで、思わず真剣に撮ったことに起因しています。どうにもこうにも目に見える色味が出ず、WBの調整や露出補正から同じ場所で50枚程の写真を撮ったのです。この時一線を越えたのでしょう、フイルムでは味わえない撮影そのものの醍醐味を感じることができたのです。今その写真を見返しても特別な景色とは思えませんし、色も不自然です。フイルムカメラで撮影を続けていたらそうした画は撮らなかったでしょう。多くの設定を行い、ただ、設定から色々な画作りをしてそれぞれシャッターを切っていく。その一連の行動が斬新であり、デジタルカメラだからこその手法だと知らされました。ようやく直近一ヵ月の間に、デジタルはデジタルとしてのの便利さや良さもあるのだと認められるようになりました。同じ写真でもフイルムとは別物の画として、折り合いをつける時が来たと考えています。20年を要しました。

 併せて、デジタルモノを嫌ってきた「自分は何かひとつでも残せたろうか」と思うことが多くなりました。欧州の撮影機材を使い、フイルムも最高のものを使い、感じ入った場所には年中通いつめ、朝から晩までそのポイントでファインダーをのぞき続けました。しかし、それほどまでに執着した風景なども、手元にあるのは100枚程度の色褪せたプリントのみなのです。ネガもポジも劣化から随分前に処分しており、手元に残ったものはイエローがほとんど飛んでしまった無残なまでの印画紙なのです。カラースキャナーで読み込んで、画像処理ソフトでカラーバランスを調整し、コントラストを調整し、少しでも当時の色合いに近づけようとしても、どうにもならないレベルの代物です。印画紙に焼き付けた直後のプリントの美しさが鮮明に記憶されているからこそ、余計にそう感じるのかもしれませんが、結果としては何も残せませんでした。

 デジタルはやり直しが効きやすいために、これまで私はアナログより下に見てきたのは事実です。実際のところ、デジタルカメラの撮影からフイルムカメラへの撮影へとは簡単に移行できません。ただ、デジタルでは連写もトリミングも、カラーバランスもその場で調整が可能です。辺りが暗くても手持ちで風景写真が撮れるだけの十分な感度領域、被写体に対する光源が異なってもレンズフィルターの交換などを行わずにWBが自動調整されること、こうしたこと等から多くの撮影機会が得られ、記録が可能です。そして”0”,”1”のデータは色褪せることもありません。私のようなアナログ人間からするとデジタルカメラによる撮影はいきなり応用から入っている気もしますが、車がなぜ走るのかという内燃機関の仕組みを知らなくても運転免許が取れることと同じと考えれば腑に落ちます。
 フイルムカメラによる撮影とデジタルカメラによる撮影は似て非なるものではありますが、一歩引いて大きな視野に立てば結果にそれほどの差はないとも知らされます。そして、あえて不便でいることに留まらなくてもよいのだと考えさせられます。記憶も記録も他からすれば同じものですし、結局自己満足の内のもので大差ありません。
 これまでデジタルで来た人はソフトなアナログの世界へ、アナログの人は機会を多く得られるデジタルの世界へ舵を切ってみるのも面白いのではないでしょうか。今更ながら写真だけでなくすべての分野に共通していることに思えてなりません。私が言うのも可笑しいのですが、固執すべきこと、固執しなくてもよいことを選別すれば、見える世界もガラリと変わるのかもしれません。

<サイト管理人> 2021年10月28日記述



 【手段が目的化してしまうことについて考える】第508回

   前回は写真について書きましたが、フイルムにしてもデジタルにしても写真機そのものが目的になっている人がたくさんおられます。特に男性に多く、彼らはメカ好きと言ってしまえばそれまでですが、不要なまでにスペックに詳しい人がおられます。カメラの発売年、秒間のシャッター数、シャッタースピード、カメラの重量など。写真機の目的は写真を撮ることであり、それほどカメラ本体に詳しくなる必要はありません。本体重量など大した問題ではないのです。集中しているときに機材の重量を感じることはありません。また、膨大なレンズに関しても同様です。レンズが持つクセといった究極のレベルまで達せられる人間は限りなくゼロではないかと感じています。
 これらは本来自己表現の手段に過ぎないのですが、「対象を限定した写真を撮ること」はかなりの重労働になるため、彼らはそれを諦め自ら写真機の内にとどまってしまうのかもしれません。「手段である道具」がいつの間にか「目的そのもの」にすり替わってしまうのです。かく言う私もそうした傾向があるので注意はしています。そこに留まると評論家になり、口コミサイトにあれこれ書込んで満足できるのかもしれません。その延長で他人の評価を気にして自分を無くしたYoutuberもたくさんおられるのではないでしょうか。だからこそ日頃から意識をして写真を撮り、気負うことなくシャッターを押せるようにならなくてはなりません。できないのなら写真などやらない方が健全です。それか写真機好きとして活動をしていけば良いでしょう。

 カメラを例に話をしましたが、日常関わるOSやアプリケーションなども同じ理屈で、このブログはWindows10のWord2019で書いています。Windowsは7でもXPでも2000でも良く、Wordも95で構いません。ただ、今の私のPC環境から結果としてWindows10とWordになっています。セキュリティーの問題もありますが、この文章とセキュリティーの話は全く別です。ローカルで作成できるからです。また、アプリケーションはWordではなく標準のノートパッドでもメモ機能でも問題はありません。他より勝手が良いのでWordを使っており、あくまで目的はブログを書くことにあります。そして、この文章はiOSで読まれる場合もあればAndroid端末で見られる場合もあります。つまりどれもが手段であり、最終的な目的は「あれこれ考えた内容をお伝えすること」にあります。読み手に受け入れられなくとも、結果として間違っていても、「自身の考えをまとめて提示すること」に意味があると思っております。

 上記に付随して投資の話をすれば、その目的は年間を通して一定の利回りを得ることですから、手元資金の運用は国内株式に限定する必要もありません。しかし、テクニカルにしてもファンダメンタルズにしても不要な程詳しい人がおられます。株式投資好きといったら良いでしょうか。おおよそ評価損を抱えて評論家になってしまいます。投資というものはあくまで運用益を出すために動く一連の行為です。その対象は実態さえあれば良いので、「資金をどこに向けるか」にはかなりの自由度があり、リスクを取らずに運用益が得られればそれに越したことはありません。ただ、この国に住む前提で考えれば外貨関係はリスクが大きく、長期プライムレートを超えるような利回りを提示している商品は大変リスキーといえます。元本保証という言葉をよく耳にしますが、元本の保証は公のものである場合にはほぼ有効なのでしょうが、民間企業では便宜上のモノと考えなくてはなりません。また、昨今、クラウドファンディングがトレンドになっておりますが、基本的には既存の金融機関から融資が得られないことからネットワーク上で資金調達を行うものであり、そこへの参画から得られるだろう表面利回りが高いか低いかには意味はありません。ほぼ儲かるビジネスへの投資参画には利害関係者の制限がかかっており、一般への門戸は開かれておりません。自分などへの「トクベツ」な情報・話は無いのです。クラウドファンディングや新興市場への投資からほんの一握りの人が成功を収め、大々的にクローズアップされるでしょうが、裏で無くす人が99%を超えている現実を見れば明らかでしょう。そのような投資話を検索するくらいならば公営ギャンプルで楽しむ方が精神的にもよほど健全です。
 投資の目的は運用益を得ることにありますから、実態があり、日本円で運用できる株式が良いのではないかと私は考えています。そして、実際に運用して毎年プラスのリターンを得られるかどうかが重要な問題です。また、そこにかける時間も労力であることから、純粋な時間当たりのリターンがどの程度であるのかの計算も行わなくてはなりません。税金を納めていてもダブルワークの方が良い人が大半ではないでしょうか。そうした意味において本来の目的から乖離して投資行為や手段そのものが目的化する人が大半になっております。かく言う私自身のこのブログやHPの更新を投資活動の一環として考えるなら、今年の時間当たりのリターンは最低賃金程度になっております。分野を問わず手段が目的化してしまう昨今に思えてなりません。溢れる情報にいつの間にか錯覚させられているのです。

<サイト管理人> 2021年11月1日記述



 【小室直樹著:日本人のための宗教原論を読み返して】第509回

   日本教という言葉を知っている人は少ないと理解しています。「日本教」について簡単にまとめると日本に入ってきた宗教はいつの間にかどれも「日本の宗教になるという事象」を示しています。

 例えば仏教は戒律や厳格さが重要になりますが、日本に入るとそれが抜き去られ、比叡山延暦寺の開祖(天台宗)は戒律そのものを廃止した経緯があります。つまり、今ある「仏教」は戒律なきものになのです。儒教も同じで、中国や朝鮮半島では今でもひとつの宗教で、儒教的葬式も存在しています。しかし、日本に入ると本質が無くなるので、日本での「儒教」は中身のない「道徳」になっております。学校教育で取り入れられている「道徳」まさにそれです。
 本来、仏教では一番大事なのは心理や悟り、儒教では政治制度やそれを通じて人民の幸せを高めることにあります。しかし、日本ではそれ以上に大切なことが存在しています。それは「国民の好み」というか、「人間そのものの好み」です。併せて、他者感覚が無い事実もあります。いつも同じ仲間とばかり話をする傾向にあります。また、そのことに疑問を挟まず、評価サイトの口コミを信用するわけです。味覚は自分のものであり、面白さ、興味の対象は本来自分の内にあるにも関わらず、そうした尺度を知らずのうちに多数に求めるのです。私などにはある種の怖さを覚えます。かつての太平洋戦争もそうですし、オウム事件や昨年からの感染症騒ぎも同じ理屈で起こったからです。  考え、感覚の違う人間ともっと付き合い、なぜ話す機会を持たないのか、大きな機会損失になっていると思います。そもそも自分以外の価値・考えの人と付き合わない限り、一生自分を客観視できないのです。

 もう少し書きますと、キリスト教徒は人間よりも神の方がはるかに大切と考えますが、日本では人間の都合が神の都合よりも大事となります。一神教では「神」が最初に存在し、神が人間をつくったとなりますが、日本では「神」にすら人間の都合で指図できれば良いという考え方が染みついています。ですから、仏に対してもそうなっております。仏教では神はまだ悟りに至っておらず、仏は悟りを得たものになっているにも関わらず、神と仏が同列になる矛盾もありますが、これについても考えません。僧籍を持っている人間も同様です。結局人間が大事なのです。

 今を生きている人間は確かに大事です。ただ、いろいろな人間がいます。結果として足を引張る人間、法律的に悪いことをする人間、その他いろいろ。それでも原理の上に立つ「神」より「人間」が大事というのは私には不思議に思えます。神や仏は人間の為にいるという考え方からすれば当然ですが、どうにも理解に苦しみます。もっとも、神の概念や仏の概念が入ってくる前からそうあったので、そもそも神道や仏教、儒教、キリスト教を信じることは難しいのでしょう。これは神を信じるか否かの話ではありません。神の立ち位置の話です。

 なお、この国に伝わる「日本教」の具体的な中身ですが、それは役人やネットを含むマスコミが「宗教」を作るというものです。「行政の都合」や「直近の現実の問題」を優先し、宗教に含まれる戒律、原理は二の次にして集団を優先するのです。ですから、一貫した行動パターンを構築できません。元から何も無いのです。そして何でも良く、最終的には何も受け入れないのです。
 また、日本人の大半は何を信じているのかというと、自分よりも大切な規範や理念ではなく、「自分に役立つモノ」です。それを大切と無意識に信じ込んでいるので、合理的な判断や理屈は通じません。これには社会的地位も学歴も年齢も関係なく、日本教の日本人には論理が通じません。都度の補助金が関係したテーマ株投資などで失敗するのはその最たるものです。
 さらに、山本七平は日本人の日本教を「空気」が支配していると表現したように、今日現在においてもこの国では自然発生した「空気」が人間を支配しています。日本人は自分の言動や行動で己を拘束していきます。集団による空気からの自己催眠というのか、洗脳に近い形態になるのです。自粛好きな国民性は今に始まったわけではないのです。民主主義や合理的な近代社会は個々人がよく考え、自分の意見を持って、例え少数派になっても主張していくべきなのに、それが出来ない空気があります。身近な会議などをみれば明らかで、会議が始まる前から大体結論が決まっているわけです。結局、誰がいつ決めたか解らないことがまかり通ってしまうため、討論そのものが成り立たないのです。織田信長でさえ最終決定をしなかった事実もあります。「私がこういうように決める」と言いたがらないのが日本人なのですが、そもそも考えを持ってきた人間が責任をとればよいだけで、法律を中心に動けば拘束が解け、自分らしさというものが芽生えるのではないでしょうか。少数派が正しいとまでは言いませんが、多数サイドに無かったことは往々にしてあります。

<サイト管理人> 2021年11月7日記述



 【転売という副業をするならまず目利きになるべき】第510回

   副業というキーワードをよく耳にするようになりました。私はポータルサイトを含む国内メディアを基本見ませんので、トレンドにも疎いのですが、周囲の会話を聞いていると「副業」やそれにかかる「転売」といった言葉が絡むことが多くなったような気がします。さらに耳をそばだてると、メルカリなどのサイトをこまめにチェックしている様子も伺えます。この人たちの考えていることは商社が行っているそれと同じで、相場より安く仕入れたものを別の場所で相場なりの価格で売るか、付加価値をつけて高く売るというものです。とりあえずネット上で完結すると考えているようです。
 聞いた範囲から判断すると、私には遊びの延長にしか思えませんが、本人たちは割と真剣なようです。そもそも不特定多数の人間を相手にモノを売る場合は警察から古物商の免許を受ける必要がありますし、利益は所得となりますから申告をしなくてはなりません。もちろん簡単であれ仕入れと販売、諸経費などから正確な帳面をつけなくてはいけません。そして、そこには手間というコストがのってきます。転売が成功しても果たして自分の工数に見合った収入があるのかといった考えは無いようです。また、在庫のストックには場所+管理というコストもかかります。公務員やサラリーマンで副業にあこがれる人もおられるようですが、自分の労力がコストである自覚を持った人は皆無に等しいでしょう。そして、業として行う取引の本当のリスクも理解できていません。買い手の評価ばかりを気にしている時点で転売には向いていません。利益以前に注文を受けた商品をその相手に届けることの重さが理解できないのでしょう。不特定多数が望むモノを調達することばかりに気を取られているようにも感じられます。特に中古品を”ネット”上で手に入れるという時点でおやめになった方が良いのではないでしょうか。

 そのような中、先日、久しぶりに中野区にあるカメラ屋に行く機会を得ました。ヲタクと言われる種類の人が入りにくい店構えで、業として写真を撮っている人が急の入用で訪れる店です。訪れるのは20年超ぶりでしたが、当時からの店員とも会うことができました。私自身も学生時代地元のカメラ店にて写真を焼く仕事やカメラ・レンズの買付けをしておりましたので、当時はカメラ店員のあるある話をした記憶があり、その店員も私のことを憶えてくれていました。
 簡単な挨拶をして、店内を一通り見回し、フィルムからデジタルまで必要と思われるすべての商品が揃っていることに感心するとともに、相場なりの値付けに納得をさせられました。「相変わらず高いでしょ」とも聞かれましたが、私は「相場なりで、商品の状態も評価も相変わらず抜群です」とお答えをしました。この店には割安も割高もないのです。レンズなどでもぱっと見安く感じるものは小傷や小さなゴミが入っており、使用に伴う擦れがあったりします。そしてその分安く価格が設定されています。この店で買う人間は業としている人が多いので、高額な商品であっても簡単な確認で購入していく人が多数で、逆にヲタク気質の人はレンズのスペックや傷の状態などを気にし、スマホで同型商品の相場を調べるといった行動を取ります。そもそも店を信用していないのです。何十年も続いている老舗並びに店員の価値が理解できません。センスがないと言いますか、そもそも、来る店を間違えています。カメラのキタムラのネット販売かメルカリや楽天市場で十分です。目が効かないので”モノ”を見る必要が無いのです。

 そもそも、相場より安くモノを手に入れたければリスクを取る必要があります。その場合はカメラなども扱うような総合リサイクルショップで買えばよいのです。時計やカメラといった品物に関しては出所の怪しい商品も良く見かけます。そして、それらを手に取り、商品の状態を確認し、動作を確認し、保証をあえて外すことからの値段の交渉までを行わなくてはなりません。保証がないのか?であるとか、状態はAか?ABか?などの質問はありえません。自分の目で確かめる、その能力が無ければ安くモノを手に入れることはできません。ネット上に掲載されている商品写真からモノの状態は判断できません。出品者のコメントからではいつまで経っても目が効くようになりません。

 例えば、以下の商品をどう思うでしょうか?ちなみに、写真は店に承諾を得て本日撮影をしたものです。こちらのお店は良心的な価格設定と言いますか、メルカリや楽天で売れば倍の価格で即日売れるでしょう。"売りたい価格"ではなく"売れる価格"としての話です。

   

 手に取り、内外装の確認を行いました。カメラのキタムラなどではABという評価になるでしょう。ABの中でもAに近いABです。そしてコメントは「小キズあり、レンズ内小ゴミあり、フード、レンズキャップ、リアキャップ、保護フィルター、ポーチ付」となります。以前、この記述方法や程度についても店員に伺ったことがありますが、
・外装の傷に関しては「大キズあり、目立つキズあり、キズあり、小キズあり」
・外装のスレに関しては「大スレあり、スレあり、小スレあり、文字消えあり」
・レンズ内の状態に関しては「ホコリあり、クモリあり、カビあり、カビ跡あり、大ゴミあり、ゴミあり、小ゴミあり、細かなゴミあり」
などと表現をしています。このニュアンスの違いを理解できるのか、また、小ゴミの中でも幅があることを理解できるのか、自分で表現する場合の基準は何であるのか、その線引きができない人は目効いた買付けも販売も行えませんし、副業として転売を行っても買い手の不満を得るばかりでしょう。普通にダブルワークをした方が確実です。転売というのは簡単ではありません。カメラやレンズが特別なわけではありません。モノは全て同じ土俵にあります。

<サイト管理人> 2021年11月14日記述



 【昨今のニュースで気になっていること:食料問題】第511回

   飢餓の問題は何十年も前に解決しているにも関わらず、まだユニセフなどの偽善的な活動は続いております。そもそも食料不足でなければこうした大きなマネーが動く活動が維持できないため、紛争や食物への投機から、現在は食料危機を作り出している状況と言えます。ですので、個々人がこうした問題については考えても仕方のないこととも言えます。活動からは距離を取るべきでしょう。

 ただ、一連の投機活動から、世界中で食料の争奪戦が発生している現実は見なくてはなりません。メディアは因果関係を求めるので何かと異常気象のせいにしがちですが、世界単位で見れば毎年どこかが例年とは違う気象になるわけで、中国の山東省の大雨なども特別視する問題ではありません。ただし、食料(小麦・大豆・トウモロコシ)価格に関しては投機的な部分が含まれておりますので、実需とはかけ離れた部分で価格が変動し、それに伴い現物の争奪戦が起こります。現状、アメリカや中国といった超大国をはじめとした小売での価格は上昇を続けております。世界の卸値ベースでは10年来の高値を付けており、この3か月は連続して上昇しています。少し前に中国国営メディアでは食料を個人として備蓄するようにアナウンスしたため、買いだめが発生し食品の棚が空いてしまう事態も起こりました。アメリカでの似たことが起こりました。また、食料を運搬する海運市場・港湾倉庫市場も連れて上昇をしています。こうした報道は国内メディアでは取り上げているのでしょうか?おそらく毎日メジャーリーグや給付金、旅行の補助金などの話で賑わっていると想像しています。随分平和な状態であり、現実逃避もここまで行けば寧ろ評価すべきかもしれません。

 この10年、日本の大手食品商社のバイヤーは買い負ける状態が続いております。鱸(スズキ)の代用魚であるナイルパーチは高騰し使えず、加工済み白身魚(冷凍白身魚フライ)と言えば深海魚ばかりになってしまいました。近隣の河川や海岸に多く生息しているスズキですら高級で、ナイルパーチも代用できず、シイラは世界中に需要があり手に入らず、キングクリップやらブルーホワイティングを食べているのです。これまで海洋投棄されてきた魚です。しかし今では立派な商品になりました。
 そもそもスズキは沿岸部に多く生息しているのです。絶滅危惧の心配もありません。クロダイ等も多く生息しており、浜名湖ではアサリを食べる魚として害魚として扱われております。食料がないのではなく、消費者のひたすら安いものを求める行動、自ら調理をしない行動が結果として食材の品質低下や価格の上昇を招いています。定置網で獲られた1kg程度のクロダイは市場では300円も出せば手に入ります。しかし、ほとんどスーパーマーケットには並びません。お造りにするくらいの用途しかないからです。そして、輸送コストや加工コスト、販売コストを加味すれば数切れで300円に設定されます。消費者の大半は300円払うならばカップ麺1個と食パン1斤、もやし2袋を買うのを選ばないでしょうか。こうした理由からもクロダイは売れないので、一般的な小売り業者は取り扱いたがらないのです。そして費用にならないことから漁師も獲りません。まさに負の連鎖です。

 なお、日本の食料自給率を低いと思い込まされている人が多いようですが、農林水産省はカロリーベースで計算した数字を出してしているのと、市場を通さない商品は一切カウントしていないことから、実質の食料自給率はかなり高くなります。直ちに食糧危機に陥る心配もありません。自給率はおそらく70%を超えているはずです。肉食や小麦食を改めれば実質100%でしょう。
 ただ、漁業や農業に対する政策が後手を打ち続けているため、漁業・林業・農業といった生活に欠かせない「食」に係る従事者は慢性的に不足しており、高齢化も限界を超えた状態となっていますが、農業、畜産に関しては大規模化が加速度的に進んでいるため、国内の牛肉や豚肉などの価格も安定しています。一方で世界で食料争奪戦が起こっている現実を知り、国内の食料生産事情について考え、労働力のこれからの向け先について真摯に対応をしなければ本当の食料不足に陥ってしまいます。

<サイト管理人> 2021年11月21日記述



 【「お金がない」と口にする人が多くなったことについて】第512回

   「お金がない」という言葉を耳にする機会が増えてきております。多くの人が人生100年時代という言葉を聞かされていることも影響しているでしょうし、内閣府などのデータからも現預金がない人(世帯)の割合は増える一方で、若年層ほどそれが顕著になっています。もちろんその逆に富裕層の保有資産額は毎年増えている現実もあります。
 私自身、年齢を重ねるにつれて関わる人間の年齢層も広がっていることから、「お金がない」という言葉を多く聞くようになったのかもしれませんが、そうした人と話をしてみると、貯蓄欲はあるようで、「あなたも億り人」のようなHowTo本を買ってみたり、黄色は金運が上がるからと財布をヴィトンのエピに買い替えてみたり、玄関に花を生けると運気が上昇するからと一日おきに生け花を買ってみたり、ネットワークビジネスに手を出してみたり、いくつも情報商材を買って実践してみたり、高利回りの金融商品(出資)に手を出してみたりときりがありません。その一方でポイント2倍デーですとか、キャッシュバックの情報には細心の注意を払っているようです。SNSをフルに活用していると言ったらよいでしょうか。こうした人たちはいつも忙しい様子で、まるで時間が無いといった雰囲気を醸し出しております。目につく全ての金銭事にアンテナを張っているからか、傍から見ているとあまりにも生活が偏っているような気にもさせられます。また、預金という資産を形成することは本来「お金を引き寄せる」などというメンタル的なものではないのですが、彼らはどうしても内面の話に結びつけたがる傾向があるとともに、スピリチュアルの分野とも相性が良いように感じられます。これでは資産の形成どころか、逆に吐き出す一方となってしまします。ツキがあるから今日は競馬で勝てるというのもその延長線上にあります。単なる「確率」の話を「運」にすり替えてしまうのです。

 そのような昨今、消費者金融にて対面の審査を行ってきた人に話を伺う機会がありました。どうやらお金の貯まらない人には一定のパターンがあるようです(ギャンブルや病気によるものは除く)。ただ、審査されている本人は気づかないままいるようです。書き記したメモを元にパターンをまとめますと、

●楽天的な人・・・口座や財布の残高を把握していない、周りの雰囲気に流される、一見気前よく見えるが節度が無い
●自分に自信を持ちすぎている人・・・自信と過信の違いがわからない、自分にできないわけがない、自分が間違うはずがない、一度選択したら突き進むべき
●それなりに高収入な人・・・一定の収入が見込める元でライフプランを立ててしまい、計画がとん挫した場合のことを考えていない、周囲との関係性において支出が大きくなりがち
●依頼心が強すぎる人・・・人に頼らなければ結論を出せない、ローンを組むことも依頼であり依存、検索することもSNSを利用して情報を集めることも同様
●自分や恋人が浮気性な人・・・関係性を良くするために浪費をしてしまう
●親と同居している人・・・一か月の生活費を把握できていない、冷蔵庫の中には何があるのかを把握できていない
●今日できることを明日に伸ばす人・・・明日になれば別の用事ができる可能性を考慮に入れていない、危機管理意識が無いため何も先延ばしにする
●人並み以上に友達が少ない人・・・寂しさを紛らわすために散財してそれを埋める
●毎日のようにコンビニで買い物をする人・・・希望小売価格で買う時点で間違っている
●家庭内孤独の人・・・家庭があっても孤独感から休日に人ごみに集まり散財する

 以上のパターンは結果論ですから、なぜこのようになったのかを考えなければ問題は解決しないでしょう。そこには家庭・職場環境などが複雑に関わってきますからどうとは言えないのですが的を得ていると思います。
 上記パターンの人間がトレンドを追いかけ、メディアの煽りモノをありがたがるならば散財は避けられません。散財させるために企業等は様々な広告を出しているのです。特にネット上に溢れているものの多くはオトリ広告で捕られるレベルに感じられるとともに、現金後払いサービスを利用した現金化詐欺が多発しているのが昨今の現状です。

 日頃、ポイント還元や全品○○%OFFセールのアナウンス、口コミ、評価に気を取られるならばそれらに関わらず、何らかの国家資格の参考書と問題集を1冊ずつ買って半年間自分で学んでみませんか?マスコミの喧騒や社会の作り出す空気から逃れ、自分の時間を作り、生活に関係する法規などを身につけるのは決して悪いことではないと思います。金融系の資格ならば金融商品のリスクも金融機関や証券会社の立ち位置も解りますし、不動産系の資格ならば権利関係の法規に強くなります。趣味と実益を兼ねながら自然と支出を抑える、そして資格手当も含め所得の増加に繋がる可能性も十分にある、一挙両得な気がします。必要以上の節約を求めるのではなく、日常溢れる情報を自然とシャットアウトしながら自分自身の知識を増やすことが結果として預金に繋がると考えます。最終的には必要な時に必要な分だけ稼ぐ能力が身につけばよいのではないでしょうか。「お金がない」のではなく、煽りモノにのせられて支出してしまうことから「お金が残らない」でいるだけなのです。

<サイト管理人> 2021年12月29日記述



 【システムは人を無能にさせ社会の分断を生むことについて】第513回

   昨今、私たちは様々なサービスの上に生活を営んでおります。お役所などもサービスを提供する存在であるとともに、これらは大きな組織であり、とてもシステマティックな存在です。一般的にシステムと呼ばれるものは利用者側の選択肢を無くするというか、画一化を図るものであり、合理化を求める活動といえるでしょう。システム化は本来効率化+生産性向上の活動でもあります。ただ、日本の場合の行政は非効率そのものであり、本来のシステムとは程遠い存在なのですが、今回のブログでは触れません。

 資本が蓄積され国家という枠組みを超えたものになり、大資本から生活に欠かせないネットワークシステムが構築されている現在、若年層を中心に多くの人はそのシステムが提供するサービスに依存しています。一方的にぶら下がっている状態であり、個々人がそれらから搾取されている構図です。まさに主人と奴隷の関係ですが、便利さの裏にある仕組みについてはあまり考えないのかもしれません。
 一方通行のこの関係は本来人間の持つ「横の連携」を無くすことに繋がり、一般的な意味における弱者を助けようといったボランティズムの発想も無くなっていきます。逆に、弱い人が助けを乞うこともできません。一部の限られた人間の発信が大々的に取上げられ不特定多数の助けのようなものが入る活動が目立つようですが、これは単なるドラマに過ぎません。どこまでも他人事の物語なのでしょう。
 今後も加速度的に人々の連携はなくなり、大きなネットワークシステムの元でバラバラの活動が展開されていくことでしょう。弱者がSNSを使って徒党を組み、一見強者と思われる存在を貶めたところで何かを得るわけではありません。強者と思しき存在がオールドメディアを動かして世論を形成することも簡単にはいきません。かつて大きな力を持った個人や団体により行われた扇動ができなくなり、人々は低い次元で横並びとなります。また、相互無関心の延長がお互いの監視を加速させます。負の連鎖が人の持つ能力を封じていくことはもう留まることを知りません。

 以上のように、人々は存在位置の如何に関わらず互いに無関心になっています。こうした多勢は感情的にも平坦になり、事実をより誇張した表現にしなくては受け入れられない感覚になっています。現在のマスメディアは国内外を問わず煽りモノとなり暴走している状態といっていいでしょう。意味ある報道は得られず、私たちはマーケット情報から事実を推察することしかできませんが、投機マネーがマーケットを形成していることから、それもどこまで信用できるかは別の問題となります。原油相場などがその最たるものです。
 話が逸れましたが、システムと個人の感情は水と油です。機械的な学習(AI)とビッグデータの世界にとって最も不要なノイズは人間の存在です。システムが完全に回るためには不完全な存在を消すことになります。進歩と生産性の向上から生まれるものはどこまで行っても損得のみであり、そこには人間的な余裕がありません。かといって人の経済活動を奪えませんから、当面「不要なシゴト」を作り、富の再分配を行っていくことになるでしょう。このような環境下で、不特定多数に尽くす人間は現れず、人間の生活レベルは低下の一途をたどり、脳内で完結する幸福を求めて最終的には自滅するのでしょう。

 困っている人がいたら思わず体が動くのが人間です。お節介な存在が人間なのです。本来生産性や効率化とは相容れないのです。多数が早くそのことに気づき、人間そのものを排斥する矛盾したシステムから脱却すべきでしょう。それが出来なければ早かれ遅かれ破綻に帰結するしかないのです。マクロの話題になってしまいましたが、「無駄」も含めた非合理的かつ「豊かな感情」を私たちが表現できる社会になることを新年の初日に願っております。

<サイト管理人> 2022年1月1日記述



 【「格差」社会という言葉に踊らされる人々と現実の状況】第514回

   昨年来この国の平均賃金が韓国に追い越され、先進国の間ではイタリアと並ぶ低さとなっていることが取上げられております。これはOECDが算出した統計であり、1ドル150円での換算になっています。国勢(為替レート変動の影響を取り除いて、その国の実質賃金が時間的にどのように変化したかを見ること:実質賃金)を加味しての結果のようですが、いまいち実感がわきません。金融立国であるルクセンブルクやスイス、アイルランドなどの平均賃金は比較になりませんし、原油産出のあるノルウェーなどと比較することにも意味を感じません。これは数字だけでは語れない問題であり、2022年1月5日現在で116円/ドルになっておりますので、国勢という曖昧な乗数を加味しなければ実際の平均賃金は20%程度上昇することとなります。この世界における平均賃金の話は日本円が安すぎるだけの問題に思えます。
 仮に為替がそのままの状況であっても、この国の物価は先進国で断トツに低い状況にあります。不動産に関しては地方都市のベッドタウンともなればほぼ無料で手に入る住居も多く見られます。限界集落は言うに及びません。この国全体で見れば沿岸部や浸水可能性地区の多くは引取り手が無い状態にもなっています。静岡県中部地区に関して言えば借家の空き室率は50%程度と記憶しております。有り余る資本がもたらした残骸でもあり、逆に蓄積されている資本の厚さを示してもいます。かつての不動産神話はおおよその地域で成り立っておりません。価値観ではなく自然な人口減や産業構造の変化から実需そのものが無いのです。
 日常の物価に関して言えば、スーパーマーケットで買い物をしていればその安さを十分実感できますが、「100円ショップ」などという小売り業態はこの国にしかありません。アメリカにも似たような店があるようですが、商品がかなり偏り質が悪いようです。都市や地方にかかわらず100円ショップは存在し、私たちの生活の一部になるとともに物価の安定に寄与しております。コンビニエンスストアーも同様です。この国の物価は北欧諸国と比べると半分以下であり、定価販売でもサンドイッチが300円程度で買えます。缶ビールは250円程で、豆を挽いたコーヒーも使い捨ての紙コップにて100円から飲むことができます。これらは諸外国では全く理解できない価格になっており、外国人観光客は空港内のコンンビニエンスストアーの商品に驚くこととなります。もちろんそれぞれの質の高さは言うまでもありません。
 仮にOECDの統計の通り、この国の平均ベースの所得がスウェーデンの80%であっても、北欧諸国に関して言えば所得の半分を税金で支払うことになりますし、物価が日本の2倍程度となっている現状、食文化もかなり低く、気候的にも恵まれないことなどから、単純に豊かさを比較することはできません。また、超大国とされるアメリカは国民皆保険制度がありませんから、民間の生命保険に毎月5万円程度を支払うことが一般であり、NYの金融ビジネス街に就労している人間が失業する際にまず気にすることは生命保険の支払いなのです。これは今も昔も変わりません。家族4人なら生命保険で月に20万円程度を支払ってようやく日本的な医療を受けられるかどうかが実情です。民間の保険に加入していなければ救急車を降ろされることや、保険の内容によっては受け入れてくれる病院がごくごく限られる現実があります。10年少し前にオバマケアなどが取り上げられましたが、これも達成されず、達成されたとしてもあくまで民間での話ですから、日本のような低額で加入できるものではありません。この国の社会保障制度は世界で最も優れたサービスのひとつです。つまり、所得云々ではなく、生活そのものにかかるコストが全く違うのです。生活レベルという観点からは諸先進国を引き離して断トツに恵まれているのではないでしょうか。

 さらにこの国では犯罪が少ないことも生活コストを抑え、豊かさに繋げている事実があります。都会や地方を問わず、夜中に女性が一人で歩いても事件はほぼ起こらないでしょう。ほぼ100%の確率で起こるだろう国が多い中、治安の維持がこれほど保たれている国は他にありません。あたかも凄惨な事件が日常起こっているようにメディアは囃し立てますが、毎日銃殺事件が起こる大国とは随分異なります。財布を落としても鞄を落としても中身がそのまま返ってくるのはこの国位でしょう。

 そもそもメディアの煽る経済「格差」とは何を言っているのでしょう?A5ランクのブランド牛が食べられないことが格差なのでしょうか?つい40年前までは牛肉が毎日の一般的な食材とは言えない状況だったことを考えれば、今日スーパーマーケットで取り扱っている食肉の品質や価格には感服しかありません。ほんの75年前の財閥解体や農地解放まで存在していた貧富の差は現代人には想像を絶するものであり、封建制度時代のそれは言うに及びません。この国には各種社会保障制度が充実しており、就労・就学には多くのサポート体制が敷かれております。私にはとても恵まれた状況に置かれていることを一切無視して些細なことについて比較をし、自分達は恵まれないと言っているに過ぎないように思えます。生活を営む上で不満も多々出てまいりますが、それは格差由来のものではないでしょう。
 社会保障を受けながら日々の生活を送っている場合でも衣食住には事足り、年に数回は旅行に行くことも可能なこの国のどこに貧困や格差があるのでしょう?グリーン車での移動が叶わないことが格差に繋がるのでしょうか?最高法規以下、この国では住所不定にはなりえないのです。住所があり社会保障が受けられ、就学の機会も与えられ、就労のサポートもある。つまり、何歳になろうともおおよその職業には就けるのです。起業も当然可能です。非常に高いレベルで機会の公平が保たれています。
 メディアの煽り記事はこれからもエスカレートしていくでしょうが、大切なことはそれと距離を置くことではないでしょうか?昨今の言う格差とは本来的な「カクサ」ではありません。法律の下にある限り、主人と奴隷のような関係は存在せず、格差などの問題は起こりえない幻想です。この国は中東の王様国家でもなければ、治安の維持がままならない大多数の国家ではありません。不満を覚えるのならば機会に恵まれていないのではなく、機会を利用していないケースが多いように思われます。日々の生活で不満も出てまいりますが、その大半は格差由来のものではなく自分の内にあるモノの見方によるものと思います。

<サイト管理人> 2022年1月5日記述



 【ゲンティン香港の会社更生法すら取り上げない桃源郷】第515回

   ダイアモンドプリンセス号での感染症騒ぎからおおよそ2年が経ちました。この国のメディアではまだ毎年のように変わる季節性感冒について連日取上げ、補助金や給付金漬けになった人々はそれらを過大に評価しているように思えますし、票読みをしている人たちにはいい風が吹いているのかもしれません。一度動き出したら破綻するまで止まらないこの国は、世界から経済的な活動の周回遅れをとるばかりでなく、かつての大きな戦争同様に「季節性感冒騒ぎの敗戦国」として歴史の教科書に載ると思われます。

 そのような中、ブルームバーグより、1月19日、ゲンティン香港が会社清算を申請したとの報道がありました。その前の週には同社子会社のドイツの造船会社であるMVベルフテンが破産申請をしたことを取り上げております。このニュースはマレーシアを本拠地とするコングロマリットであるゲンティングループの一角であるゲンティン香港グループが事実上崩壊したことを意味しております。会社清算ですからクルーズ船事業などは売却されて今後も事業を継続する形になると思いますが、スポンサーの有無によっては破産手続きに移行するのかもしれません。

 この国ではあまり馴染みの無い会社とも思いますが、ゲンティン香港は、クルーズ船事業やリゾート運営事業を行っております。特に、クルーズ会社のスタークルーズ、クリスタルクルーズ、ドリームクルーズ、リゾートのリゾートワールド・マニラに関しては広告などで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。スタークルーズはシンガポールをベースに東アジアから東南アジア各地で、4日間前後のカジュアルクラスのクルーズを中心に展開しており、日本にも多くの船が寄港しておりました。船室は1泊100$くらいから用意され、4泊程度の気軽な船旅を提供しておりました。憧れの船旅が比較的安価にて堪能できるとあって人気を博しておりました。クリスタルクルーズに関してはスタークルーズよりも上質な船旅を提供しており、クリスタル・シンフォニーなどの高級クルーズ船は国内大手旅行代理店でチケットを販売しておりました。1泊400$くらいのプランが多くあったと思います。クリスタル・シンフォニーやクリスタル・セレニティが那覇や神戸、長崎、横浜に寄港する際にはメディアが取り上げ、乗船客がお土産を手に船に戻るシーンなどが報道されていたようにも記憶しております。
 日本でも馴染みのあるクルーズ船を所有・運航している会社の事実上の倒産は大変ショッキングなもので、また、破産申請を行った子会社で造船会社のMVヴェルフテン、ロイド・ヴェルフトに関してはドイツのブレーメン州にて最大の雇用を創出する企業の一つとなっています。20万トンクラスのクルーズ船を造船できる世界最大規模の室内ドックを持つこの会社の倒産は日本国内で例えるなら大手造船会社クラスのインパクトがあるでしょう。関連会社も含め、数万人規模の生活に直接影響を及ぼすことは避けられない事態で、地域自体が死滅してしまう状況です。

 こうした大きなニュースをこの国のメディアではほぼ報じません。とは言え、BBCでもロイターでもゲンティン香港に関しては大きく取り上げませんでした。多数の関心を得られないものは記事にすらされない昨今なのでしょう。中国の恒大集団については毎日熱心な記事起こしが行われますが、昨年来よりの同国の大手ハウスメーカー各社が資金調達難に陥っていることなどついては今のところ具体的な記事になっておりません。会社名を各エンジンの検索窓に入力しても情報を得ることができない状態です。そういう意味において北半球の比較的裕福な地域に住む人たちの国々は「見たくないことは見ない・見えない」、「興味のないことは知らない・知らなくて当たり前」、「自分からニュースソースの出所を調べるようなことはしない」でポータルサイトのトピックを見て満足していられる桃源郷と化しているのかもしれません。

<サイト管理人> 2022年1月20日記述



 【時事の話:共通テストの試験問題流出ニュースについて】第516回

   先日行われた大学入学共通テストの試験中に試験問題が流出したという話を耳にしました。国内ニュースを追いかけるとこれは単なるカンニングであり、性能とUIに優れた携帯端末が普及したことや、通信速度の飛躍的な向上、コミュニケーションの為のアプリケーションの利便性がもたらした新しい手法が見つかったに過ぎないと理解しています。本日、これに関して19歳の大学生が警察に出頭したというニュースが入っておりますが、スマートフォンを洋服に隠しながら撮影したと話しているようです。あくまで現時点では出頭しているだけであり、そもそも実行した当人か、背景も何も今後司法で判断されることなので、ここでは事件としては触れません。
 過去を辿れば11年前の大学の入学試験(2次試験)の問題の一部が試験実施の最中にヤフー知恵袋に投稿され、第三者がそれに回答するカンニングもありました。その時は2つ折り携帯電話のメール機能を使い、当人がブラインドタッチにて問題を入力して投稿を行ったようですが、随分上手く端末を使いこなして、たいしたものだと感心した記憶があります。これらはワイヤレスネットワークが本格的に普及し始めた2000年前後から想像できたことで、今更驚くようなトピックスでもありません。現在の技術からすれば通信端末の形状やサイズなどはどのようにも設計できるので、ツールとしてスマートフォンを用いるのみならず同様の問題は必ず起こりますし、昨年以前よりかなりの数が起こっていると考えるのが自然でしょう。

 今回の共通テストに関しては、問題を送った人が試験問題をスキミングするために非合法な仕事としてテストを受験していたのか、それとも自身の受験の為に問題を外部に送信したのかはわかりません。ただ、仮に後者であれば、当人は随分受験勉強をしていたのだろうと推察します。大なり小なり一定の学習時間を求められる試験を受ければわかるように、「用意や準備をするほど人間は心配になる生き物」と思っています。今後の人生に係るような試験ともなれば、その直前には体の震えが止まらないのが普通です。吐き気が止まらないのが普通です。受験に余裕がある人間は、「自分が受からなければ誰が受かるというのか」とまで割り切れる手順で学習を行い尽くしたほんの一部の人間か、受かれば儲けと考える最初から不合格の人間です。日々受験勉強を行ってきたからこそ「人よりも1点でも多く取りたい」、「人を振り落として自分こそが合格するのだ」という気持ちになるでしょう。この感情が湧かなければ人間とは思いませんし、受験そのものが必要なくなります。
 決まりというものを逸脱する行為を自制する能力がテスト当日までに養われなかったのであって、カンニングが見つかったであるとか見つからなかったということではなく、ルールを守るという教育も並行して行わなければならなかったと周囲は反省し、試験の当日はこのようなことが起きにくい環境を作るべきでしょう。単に試験中の監視強化ばかりを叫ぶのではなく、そうしにくい自然な環境づくりが運営側の責務です。単に「懐に忍ばせたスマホのカメラで撮った試験問題をワイヤレスネットワークで送って回答を求めた事件」が起きただけにも関わらず、今後全受験者の持ち物検査を徹底すべきというなどという簡単な結論に帰結しないで欲しいものです。そういう行政目線の対策を行うならば、人間が簡単にネットワークで繋がるような現在の社会の仕組みそのものから議論を始めるべきです。LINEなどを見ればわかるように、不必要なまでのコミュニティー形成や信用スコアの常時管理、証券投資、決済、ファイナンスまで行えるような総合サービスは本来利用者側に相応な知識や自制が求められるものでしょう。セキュリティーも然りです。便利さに隠れておりますが、既にテクノロジーは人間の能力を超えて自身が誘導される側になっていることを理解しなければ、ツールであるスマートフォンひとつの状況(ハード・ソフトの外的要因、アプリケーション・ソフトウエアの運営会社のちょっとした規約変更)で生活が破綻してしまいます。便利さやお得の裏にあるのはそれぞれの運営母体毎のユーザーの囲込みと手数料商売という搾取です。もう多数の人々が組込まれてしまいましたが、「仕組み」に属すればそこから外れるのは容易ではありません。

 話が随分逸れてしまいましたので共通テストに戻しますが、現時点において当人及びその周囲は必要以上の社会的制裁を受けていることでしょう。私はあくまで「撮影を行ったのが純粋な受験者であったならば」としてこれを記述しておりますので、理想主義者であるとか生ぬるいとの感想をもたれると思いますが、今回の問題は罪を憎みすぎる昨今への警鐘にもなっているように思えます。あまりにも物事を単純化し過ぎてはいないでしょうか?原理・原則・心理等から技術や社会の仕組みを見直せる時間はそう残されていないと思いますが、メディアのトピックスに踊らされる人ほど責任追及の傾向があるとも感じております。こういう問題というのは時系列的に考えなくてはならないので、常時反証してみる必要がありますが、その気持ちがあり、かつ、行動を起こす人がどれほどいるのか疑問です。少なくとも新聞や地上波、ポータルサイト等の云々を問わず大手メディアでは定期的な取組みは行われないでしょう。つまり、カンニングの話は小さなトピックであることを言い表しているわけです。現在は2011年の災害すらそうなっています。ワイドショーの時間を埋めるため、記事で紙面やサイトを埋めるために囃し立てられる小さなトピックスに振り回される繰返しが今後も永遠に続くことでしょう。カンニングペーパーを利用して良いとは言いませんが、それと同等の行為がトップニュースに来る昨今には違和感しか覚えません。

<サイト管理人> 2022年1月27日記述



 【個人情報について改めて考える時期が来ていることについて】第517回

   何年か前より現金決済を嫌う風潮が蔓延しております。表向きはポイント還元で盛り上がっておりますが、その裏ではクレジットカード決済会社の手数料、QRコードやバーコードによる決済手数料収入の拡大と硬貨の流通量を縮小させる意図などが見え隠れしています。還元率の改悪などがニューストピックとして取り上げられるのは既に仕組みそのものが完成し、サービスごと企業の寡占化が完了していることも示しています。○○PAYではPayPay、auPAY、楽天PAY辺りで落ち着く形になったという感じです。そしてそれらはクレジットカードからチャージするパターンが主流でしょう。現金を都度チャージするパターンや銀行口座を紐づけるケースの方が割合としては少ないように思えますが、統計が参照できないのでこれは主観です。また、やたらとクレジットカード決済を行うことへの疑問は別の機会に記述できればと思います。

 単純につり銭が減るのは良いことですが、決済のデジタル化はその人間の行動履歴を未来永劫記録することを意味しており、大切にしなければならない個人情報というものについて少しでも考えを巡らせてほしいと感じております。これは年齢が若くなるほど余計に重要な問題であり、特に教育に携わる人間の情報管理意識を高めてほしいものと思います。産学を切り離して学府が中心となって訴えるべきテーマではないでしょうか。
 そもそも匿名性の高い現金での取引からは個人情報は引き出せません。個人やその流れが特定できない以上、行動履歴、趣味嗜好も関連付けられません。良くも悪くも急速に情報化している昨今は生まれてよりすぐに顔という重要な認証手段のひとつをスマートフォンのカメラを通して永遠と巨大サーバー(クラウド)に提供され続け、位置情報も、検索履歴、購入履歴も同じ状況におかれています。また、設定上はクラウドにデータが存在せずとも、どのようにデータが管理されているかは不透明です。中国企業のサービスが危険でアメリカ企業なら大丈夫ということではありません。さらに、個人の有する端末に保存されたデータをデフォルトないしダウンロードしたアプリケーションにて利用することへの「同意」を安易に行うことが当たり前になっておりますが、規約を読まず、「何を意図するのか」を考えず、「何に利用されるのか」を考えないで各種サービスと利用するのはいかがなものでしょう。これではプライバシーなど存在しないも同様です。個人情報の保護はこの先何十年も生きていく世代にとっては大きな問題であり、アメリカや欧州では基本となる顔認証自体の是非ついて議論が始まっております。正確には把握できておりませんが、一部の州や国では禁止の方向に向かってくれるのではないかと理解しています。この辺りは民主党系のメディアではなく保守党系のFOXなどで取り上げております。

 既に街頭や店舗には解像度の高い監視カメラが死角無く配置され、自動車には高性能なドライブレコーダー、個々人は簡単にFHD以上の動画が記録できる端末を当たり前に持ち歩く昨今、自宅も含め純粋にプライベートな時間を獲得することはほぼ不可能でしょう。ネットワークに繋がれば無限に情報が出てくるとともに、秒単位で大量のデータも収集されています。ビッグデータからのAI生成、そしてその活用と言えば聞こえは良いのですが、人間の行うべき最低限の思考、判断を奪うシステム開発には疑問を投げかけざるを得ません。ひとりで過ごすことはあたかも社会から隔離されているように思われるかもしれませんが、オンラインで何かをしていれば常に自分というものを提供し続けていることになるのです。端末を操作しなくとも自分という人間がこの時間にこの場所にいることを提供しているのです。

 ネットワークから完全に遮断されてオフラインの状態で過ごすことは発想力や想像力を増加させる観点からも大切になるでしょうが、繋がりという名の空気を好む人々にはもう難しいでしょう。アンデッシュ・ハンセンの書いた「スマホ脳」を参考にすれば、2000年から2010年くらいまでが人間のIQのピークといわれており、この10年で7ポイント以上低下しているとされております。現在までに10ポイントを超える低下がみられているのかもしれません。これまでに書いたことはもはやノスタルジーに過ぎないのでしょうが、毎日溢れるどうでも良い情報、情報の公開元がわからないデータ、些細な気象の変化、旧西側サイドの偏見に満ちた経済安保情報、これらを見ることで得られる満足感のような協調という名の幻想に気づくことはできないものでしょうか。皆と同じでいること、他人と違わないこと、総意に逆らわないことがビッグデータを基にした情報化の結末です。本能に根差した行為でもあるので、仕方のないこととも結論付けられます。一方では多様化を声高に叫びながら、実のところは単一化が進んでいるわけです。人間はテクノロジーの使い道を誤ってしまったこと、個人情報というものが人間にとって重要なものであること、時間が人間に残された最も貴重な資産であるにもかかわらず、オンラインにて日がな一日画面にかじりつくことは人間であることを諦めているようにしか思えません。ポイントを貯めることに終始するのは全く感心できません。自分がこの瞬間何を失っているのかを考えない安易な行動は、自分の未来の選択肢を狭めることに繋がると考えます。つまりは機会の損失です。本来合理的な活動で得られるはずの時間を捨てているのです。

 ほんの一握りの「提供する側の人間」に利用される大多数の人々という構図はますます加速していくでしょう。すべてを危険視して何もしないというのではなく、必要なサービスを最低限で利用することや個人情報についてもう一度考えるべき最後のタイミングが来ているのではないでしょうか。スマートフォンを離せない生活、それによる電子決済は言うに及ばず、ChatGTPといったテキスト生成系のAI、グラフィック生成系のAI、音楽を生成するAI等を自分の一部であるかのように使う生活、搾取という便利さで覆われた不都合な現状には憂鬱さしか覚えない今日この頃です。

<サイト管理人> 2022年12月25日記述




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